フルイング



大人になるとストレスの解消法が限られてくる気がする。

徹夜でカラオケしたり、死ぬほど酒を呑んだり、元カレに意味もなく電話をしてみたり、

バッティングセンターに来てみたりするけれど

あんまりスッキリすることはない。

あれ? 昔ってどうやってストレス発散してたっけ。



ぼすん、と鈍い音がしてボールがなまえの隣をすり抜けたことを知る。

85km/hは打てるけど120は打てない。

せっかくストレスを発散しに来たのに、余計ストレスが溜まる。



「あっかんわぁ、もっと腰使い。腰。」



ネットの向こうから無駄に大きい声で真島が野次る。

一週間溜まりに溜まったストレス発散と運動不足解消を兼ねて彼の誘いに乗ってみた。

真島とバッティングセンターに来る時は良い。

だって他の客は皆そそくさと帰ってしまうから、やりたい放題だ。



ぼすん



「ほらぁ、なまえちゃん腰やで腰。」

「うるさい」



およそバッティング向けと思えない腰つきで、ひゃっひゃと下品に笑う真島の声がする。

ちらっと流し目で盗み見ると、錆びた鉄格子に革手袋の指を絡ませて

完全に馬鹿にしきっている真島が嬉しそうに笑っていた。



「次でラストやでぇ。気張りやー」



服装もそうだけれど、立ち居振る舞いが本当に柄が悪い。

たまにキリッとしている時は紳士っぽくてカッコいいのに、どうして普段からこう

いかにも、という感じを醸し出してしまうのだろう。



カツッ



芯を外した金属バットに当たった球が、情けなくぽてんぽてんと転がっていく。

がしゃがしゃ錆びれたモーターの音が止まって、マシンが動かなくなった。



「交代。」



乱暴に扉をくぐってバッドを押し付けた。

結果は芳しくなかったけれど、思いっきり力を入れて肩を動かしたことで

ほんのちょっとだけスッキリしたことは内緒だ。



「なまえちゃんはアレやなぁ。あっちのバットの方が得意やもんなぁ。」

「死ね。」



悪態をつくと真島は嬉しそうに笑った。



Dallying with you





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