s'endormir
















ベッドに入ってから随分と盛り上がった。

最初はくすぐったいと言っていた内腿も、撫でればぴくりと痙攣する程になり

荒くなった吐息の合間に掠れたような声も漏れ出でる頃になって

さぁ、お待ちかねのお楽しみがやってきたとなまえの膝を割って腰を据える。

冴島の両手に持ったなまえの足がずしりと重く感じ、ふと顔を見つめてみた。



「…寝とるやないか。」



先ほどまで喘いでいたと思っていた唇は薄く開いて、すうすうと寝息を立てている。

長い睫は閉じられて、薄い瞼の下で眼球がコロコロと動いていた。



「おい、なまえ。」



小声で呼んではみたけれど、なまえは仰向けで裸のまま

健やかな寝息を立てていた。

起こしてまで致すというのもなんだか自分本位で申し訳なくて

冴島はそっとなまえの足を下すと、ベッドで寝転がる恋人の横に腰掛けた。



「ん…あ、嘘、ごめん。」



ぱちりとなまえの目が見開いて、慌てたように飛び起きた。

その肌は相変わらず白く艶やかだけれど情欲の影は消え失せていた。



「えぇよ、別に。」

「いや、ホントごめんなさい。」



冴島が片手でなまえの肩を軽く押し、ベッドへ押し戻す。

先ほどと違うのは、ベッドへ押し戻した後の冴島が変わらず腰掛けたままでいることで

なまえの上には乗らなかった。

慌てたようななまえがしきりに謝るのを、冴島は優しく制してシーツを掛けてやる。



「疲れてんねやろ、寝とき。」



明日は休日、テンションは最も上がる頃だけれど

身体の疲れがピークに達する日でもある。

平日、日付が変わる頃まで働いて朝は情報番組のおはようございますと共に目を醒ますなまえもまた

金曜日の夜は疲弊の色を濃くしている。

でも、と申し訳なさそうに肩に触れるなまえの手を握って、冴島は笑ってやった。



「気にすんな。」

「我慢は、身体に良くないのよ。」



シーツの上に放たれた手をするりと冴島の腿からその向こうへ滑らせて

セクシーな声色のなまえが、触られたいであろう箇所をつつ、と触る。

お楽しみを待つばかりだったそこは確かに反応を示していたけれど

疲れ切った恋人に無理をさせてまで、得たい物がそこにあるようには思えなかった。



「そのまま返したるわ、その言葉。」



睡眠欲、食欲、性欲。

絶妙なバランスで保たれている人体同士が欲している欲求がぴたりと合うタイミングが来ることは

ちょっと神秘的で、結構難しいことのように思えた。

渋々手を引っ込めたなまえがまだ何か言いたそうに、喉元まで引き上げたシーツの間から

照れたような、何かをごまかすような笑いを向けた。



「寝てる間に襲っちゃ嫌よ。」

「阿呆。」



乱れた前髪をくしゃくしゃと更に乱しながら、冴島が笑うと

なまえもやっと安心したように枕に後頭部を埋めた。



「ごっついことしたるわ、めちゃくちゃなこと。」

「きゃー、冴島さんえっち。」



ふざけたように笑いながら、なまえが伸ばした手の指に指を絡めてやる。

細い指はいつも冷たいのに、もう眠たいのか今ではほかほかと暖かかった。

手をつないだまま、冴島が片手で煙草を探り出して火を点けると

暗闇の中でもうとうととなまえの瞼が閉じたり開いたりを繰り返すのが見えた。



「もう、寝ぇ。」

「んー…。」



この夜に、本来すべきだったことを期待していないと言えば勿論嘘になる。

それでも理性が本能に打ち勝つ身体に成長とも衰退とも云える感慨深さを感じながら

冴島が2口目を吐き出す頃には、すっかり眠りに落ちていた。










限りをくす日々が





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