sovrastima













年収はたぶん、同世代の平均の倍とはまではいかなくても

それなりに多い方だと、納めている税金の額で知っている。

エリートコースと揶揄される程には、出世街道と呼ばれる道を

たぶんスポーツカーかジェット機でぐんぐん走っている。

昔の友人が、あなたはしっかり者ねと幼い子供を抱いて微笑んだ。

同じ台詞を、ベッドの淵に腰掛けた真島の背中がぽつりと吐いた。



「…そうかな。」



煙草の煙が彼の肩越しにふわふわと天井へ流れていく。

セックスをする時に必ずすべての照明を、真島は消したがった。



「若い女っちゅうんは、もっと、甘えたなもんやと思とった。」



それが正解なのか不正解なのか、解りかねる温度で真島は吐き捨てた。

いつもこうだ、彼は物事の本当に大事な所を煙に巻いてしまう。

なまえが裸のまま身動ぎするとシーツがするすると音を立てて皺を深くした。



「そうなのかな。」



達観しているように見られる容姿を疎ましく思ったことはないが

自分では自分の持ち得る知識は年齢相応の、決して秀でたものではないと思っている。

事実、惚れた男とのセックスは自慰より幾分か気持ちが良いということも

最近知ったばかりの目から鱗な新情報だったりする。



「甘えて欲しかった?」



暗闇の中、手探りで見つけた自分の煙草を慣れた手つきで一本抜き出す。

ライターを探すのが手間で、真島の右手に握られたままのライターを催促するように側へ寄ると

真島はゆっくりとなまえの手にライターを握らせた。



「いや。」



煙草に火を点けながら、真島に猫のように甘えている自分を想像してみた。

むず痒い気持ち悪さに襲われながら、自分の妄想の癖に自分を羨ましく思った。



「一人で、生きてけそうやなぁって。」



真島が呟く、指の先で弄んだ煙草が随分短くなっている。

彼の手元にある灰皿をそっと裸足で遠ざけて、小さな抵抗をしてみた。



「ごめんね、私、そんなに」





聞き分けの



諦めの














女じゃない。


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