sieste










久々に休みの合った休日、どこかへ行こうかとも思える気候の良さだったけれど

前日の酒が残る頭でお天道様の下を歩く気にもなれず

ダラダラしている内に時間だけが経っていた。

テレビは音量を低くして、古い映画を流している。

珈琲を飲んで、冷蔵庫にあるもので適当に炒飯なんかを作って、またゴロゴロしていると

ソファで横たわるなまえから静かな寝息が聞こえて来た。



「なんや、寝てもうたんかい。」



手持無沙汰になまえのタブレット端末を弄っていた真島が振り返る。

薄いブランケットをかけて、なまえはすよすよと眠りの中に入っていた。



「口開けっぱで…ヨダレ出るで。」



起きている時は、特に平日なんかは昼も夜もなくひっきりなしに鳴る電話に向かって

何やら早口で小難しいことばかりを呟いている唇は

ぽかんと間抜けに開かれたまま、深い息を吸ったり吐いたりしている。

つんと唇をついてみると、鬱陶しそうにごにょごにょと口を閉じてから

またゆっくりと、あの間抜けな形に開いていった。



「ぅう…ん…」



なまえの眉間に皺が寄って、何やら苦しそうに呻いている。

忙しい社会人、充分に睡眠が取れているとは言い難いのだろう。

つまらないけれど寝かしておいてやろうと真島は手を引っ込めたけれど

なまえはまだ何か苦しそうに呻いていた。



「うぅ…、ダメ、それは…」

「なんや、寝言かい。」



なまえが苦しそうに呟く寝言に聞き耳を立てる。

眉間にぎゅっと力を入れたまま、なまえは息も絶え絶えにやめて、だとかもうダメ、だとかを繰り返している。



「やァらしー夢でも見てるんか。」



真島はなまえの横たわるソファに肘をついて、苦しむ寝顔を見つめた。

昨夜、明日は休みだと頑張り過ぎてしまった夢でも見ているのだろうか。

他の男のことでなければ良いと思いながら、瞼の下でくるくる動く眼球の動きを追った。



「ち、ちきゅうのへいわ、は…私が…」

「はぁ?」



頬杖をついていた真島の顔が歪む。

時折首を動かしながら、なまえはあろうことか

地球の平和を守っているらしかった。



「心配せんでも、日本は今日も平和やでー。」



固く握りしめられたなまえの左の拳を上から包んでぽんぽんと叩いてやる。

せっかくの休日に仕事から解放されておきながら、わざわざ地球の平和の為に戦ってやるなんて

貧乏性な奴、と真島は溜息を吐いた。

うんうんと唸るなまえの額には僅かだけれど汗をかいていて

貼りついた前髪を退かしてやると、んん、と一層苦しそうに呻いた。



「やめろっ!変態真島仮面!!」

「あだッ!!!」



ノーマークだったなまえの右手からパンチが炸裂して

なまえの寝顔を見つめていた真島の鼻っ柱を強打した。

大声を出して仰け反ると、その衝撃でなまえが目を醒ます。



「え、何、どうしたの。」

「どうしたちゃうわ、アホ。」



鼻血が出ていないことを確認しながら、なまえに恨みがましい目線を向けた。

なまえは起き抜けの顔できょとんとしている。

何が起きたか、解ってないようだ。



「お前が守らんでも、地球は今日も平和やわ。ボケ」

「はぁ?」



何故怒られたのか分かっていないような顔のなまえにもう一度阿呆と投げかけると

なまえは目を擦りながら、なんかごめん、と謝った。










麗らか平穏








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