nearby





部屋の中は暖かくて、人が住んでいる気配がした。

なまえの煙草はメジャーな銘柄なのに、彼女の体臭と相まって独特な匂いになる。

毎朝セットされている長い髪が、一日の終わりに差し掛かって

取れかけたカールを背中に揺蕩わせているのを認めると

何となく抱き締めたくなった。



「どうしたの。」

「んー…。」



絨毯の上で座り込んで、熱心に携帯を弄っているなまえの背中から

包み込むように抱き締めても、彼女は振り返りもしない。



「欲求不満ですか。」

「ちげーよ。」



抱き締めると小さな背中を胸に預けて来た。

煙草と外気の匂いの中で、長いこと変わらないシャンプーの匂いがした。



「今忙しいんだけど。」

「ゲームしてるだけじゃねぇか。」



飽きねぇの、と問うと無言で後頭部が縦に動いた。

肩越しに小さな画面を見ると、流行りのゲームに勤しんでいる。

集中しているなまえの首に頬擦りすると、くすぐったいと縮こまった。



「今いいトコなのに。」

「気にするな、こっちも勝手にやってるから。」



一端始めるとプレイ終了まで止められない、この手のゲームは非常に時間泥棒だ。

相変わらず携帯を弄るなまえの、今度は耳に唇を這わす。

くすぐったそうに身を捩るなまえを抱き締めたまま、頬へ首筋へうなじへ顔を埋める。

体温のある女の匂いに心底安心する。



「あ、ちょ、ホント待って。」



大吾の手がなまえの上半身に伸びると、少し焦った声でなまえが身を捩る。

到底脱出することはできない程度の力で抵抗するなまえに返答せず

黙ったままシャツの中に手を入れた。



「待ってって、お願い。」

「気にすんなっつったろ。」



肩越しに見えるゲーム画面は、かなりいい所に来ているのを確認してから

どんどんとその手をシャツの奥へ進めて行く。

時折、なまえが困ったように小さく声を上げた。



「困ったひと。」



小さなボタンを押して携帯の画面が真っ暗になると、観念したようになまえが振り返る。

少し紅潮している頬に再度唇を押し当てると、柔らかい感触がした。



「誘ってるの?」

「ちげーよ。」



ただくっついて居たいだけだと言ったら、信じて貰えるだろうか。

深く背中を預けるなまえの髪を撫でてやりながら額にキスをすると

まだ若い恋人は、優しい顔で小さく笑った。




セックスりも近く




prev next









人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -