ventre




















梅雨に入る前に大掃除をやってしまおうと休日を返上して事務所を訪れた。

不要な書類の廃棄や、普段触れない場所の清掃をするのにスーツは必要ない。

ティーシャツにジーンズ姿で書類を仕分けているなまえを横目に

冴島は応接用のソファの上で手持無沙汰に煙草を吸っていた。



「なんか手伝おか。」

「平気だって。ありがと。」



冴島からの申し出は今日何度目になるだろうか。

久々の休日だし出掛けるかという彼の誘いを、掃除をしたいからと言って断ったなまえもなまえだけれど

それなら何か手伝おうかと合流してくれた彼も相当お人好しだ。

お言葉に甘えてみたものの、元々冴島の助太刀を宛てにしていなかったものだから

お願いしたのはせいぜいシュレッダー済みの紙屑のつまったゴミ袋を運ぶことと

デスクの下の絨毯に掃除機をかける際に、少し持ち上げて貰うことくらいだった。



「遠慮せんでええのに。」



彼は立ちあがると、新たに増えたゴミ袋を数m先の玄関先まで運んで行った。

本格的に手持無沙汰と見えて、なまえは思わず苦笑する。



「じゃあ、脚立抑えててくれる?」



壁に並んだ棚の、その一番上にもファイルが並んでいる。

長いこと手を付けていなかったが、確かあの中にも捨てるべき書類が紛れているはずだ。

首の動きだけで返答した冴島が手を掛けたのを見届けてから、なまえは脚立を登った。



「そんな腹出しとったら、冷えるで。」

「んー?」



脚立の最上部に腰を掛け、足を広げて座るなまえを見上げながら冴島が呟いた。

少しだけ丈の短いデザインのティーシャツは、腕を伸ばすと確かにめくれ上がっている。

なまえは棚の上のファイルを整頓しながら、バレないようにお腹に力を入れた。

冴島の小言を受け流して、必要なファイルと不要なファイルとを分けていく。

随分埃が溜まっている、ここも掃除してしまいたい。

なんて考えていると、ちらちらとむき出しの腹筋を冴島の舌が舐め上げた。



「うわぁっ!」



反射的に身体を竦めると、対面で脚立を抑えていた冴島の腕がなまえの背中を抑えた。

全く危なげもなく脚立の上にとどまったなまえを覗き込む顔が笑っている。

予定調和、想定の範囲内といったところだろうか。

もしかしたら予想以上の反応をしてしまったのかも、悔しい。



「ビックリした、もう。」



流石に驚いて手を離してしまったファイルは拾えなかったようだ。

なまえが姿勢を持ち直したのを見届けた冴島は床に落ちたファイルを拾って

笑いながら手渡してきた。



「誘っとるんか思て。」



なまえなら両手を使うファイルを、片手で手渡す冴島の笑顔は久々に見た気がする。

怒る気も失せてなまえは挑発するように眉を上げて見せると

先程よりわざと思いっきり腕を伸ばした。



「大胆ですやん。」

「それ程でも。」



脚立を抑えていた両手がするすると上って、なまえの腰を支えた。

すっかりめくれ上がったお腹に何度もキスをされながら

くすぐったいと笑う、なまえの手はもうファイルの仕分けを終えている。




















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