「いらっしゃーい。上がって上がって。」



ジーンズにトレーナーという、休日らしいラフな服装に

適当に髪をまとめたなまえが出迎える。

確か今年のGWも、この部屋で同じメンバーで過ごした気がする。

水回りを掃除したのだろう、洗剤の化学薬品の匂いがもう少しで換気されるような

生活臭のするリビングは明るかった。



「おはようございます、大吾さん。」

「おう峯、元気してたか。」



流石上下関係のきっちりした男なだけに、大吾の持つ荷物をすぐに受け取る。

なまえの家でだらだらと集まる時にいつまでもひとりだけスーツというのは堅苦しかったので

いつだったか大吾が買い与えた部屋着代わりのTシャツとパンツで髪を下した峯は

普段の彼よりもずっとずっと若く見える。



「うわ、めっちゃあるね… どれやる?」



ソフトをソファにバラバラと広げ、なまえが声をかける。

RPG、ホラー、格闘などなど。

とりあえず最初は全員で対戦できるものにしようと、レースゲームにした。

品田は使用キャラにこだわりがあるらしく、「俺、クッパ」と真っ先に宣言した。



「俺はヨッシーでいいや。」

「じゃあ私キノピオ。」



小回り重視の大吾、カーソルを動かすのが面倒ななまえが使用キャラを決める。

峯は無言でなぜかピーチ姫を選択した。





「ちょ、なまえちゃん、ダッシュゾーンの手前にバナナ置くのやめてよ!」

「勝負の世界は非情なのよ。」

「峯お前それ逆走してるって!」

「…。」



結果は大吾の勝利だった。

品田となまえは接戦の結果品田の勝利に落ち着いた。

画面の中のピーチが何度もジュゲムに釣りあげられていて可哀想だったので

1度トーナメントをやったきり別のゲームに変更することにした。



「コレ私得意。パズルゲームならルールも簡単だし。」



なまえの提案で次のゲームはぷよぷよに決まった。

大吾が簡単に峯にルールを説明すると、彼はわかったようなわからないような顔をした。



「とりあえず一回やってみようよ。2人対戦で、勝ちあがりってことで。」



峯に慣らしプレイをさせている間に相談の結果、品田の仕切りでトーナメントが組まれた。

さすがに大人になると集中するゲームを長時間続けるのは辛い。

公正なるじゃんけんの末、初戦は品田対なまえ、次が大吾対峯と決まった。



「うわ、何、なまえちゃんちょっと待って」

『ファイヤー!アイスストーム!ダイアキュート!』

「ふっふっふ、アルルの化身と呼ばれたこの私をなめんじゃないわよ…ッ!」



品田の画面がみるみるおじゃまぷよで埋まっていく。

大吾と峯はベランダの喫煙スペースで、盛り上がる品田となまえをのんびり見つめていた。

晴れた風が部屋の中へ吹き抜けていくと、もう中性洗剤の匂いは消えていた。

時折峯が「あれは何ですか」と大吾に尋ねる以外は

とても静かな休日の時間が流れて居た。



「よっしゃ、勝ちぃ〜!見た?今の見た?」



なまえがはしゃぎながらベランダへ出てくるので、恐らく決勝出場はなまえだろう。

悔しそうな品田からコントローラーを受け取った大吾の隣に峯が座って試合が開始される。

初戦は、大吾が勝った。



「堂島くん、ちょっと手加減してあげたら?」



それなりに粘ったけれど、結局色とりどりのぷよぷよで埋め尽くされた峯の画面に

思わず品田がそう助言する。

何か言いかけた大吾だったが、思案顔の峯がふむと呟くのに顔を向けた。



「いえ、次はもう、大丈夫です。」



2回戦を開始するカーバンクルが消えるや否や、峯の指先が物凄い速さでコントローラーを連打する。



「早っ…」

「連鎖すげぇ…」



入れ替わりに喫煙スペースで休憩していたなまえと品田が驚愕するのを尻目に

2回戦、3回戦は峯の圧勝だった。



「ルールと操作方法が解れば、負けませんよ。」



にやりと笑う峯の顔がこれまでになく極悪に見えたと後の大吾が語る。












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