18:二学期


「おー、吉貞くん久しぶりー」

「おー久しぶりじゃなあ。なまえ焼けたなあ」

「っさい。日焼け止め塗っても汗で落ちちゃうんだよ」

「女子は大変じゃなあ」

他人事のように笑う吉貞くんだが紫外線をなめてたら痛い目見るぞ。将来シミそばかすに悩まされるぞ。

8月ももう終わる頃、二学期は始まった。小学校中学校は9月からだったが高校は少し早く始まるらしい。
燦々と太陽の陽射しが降り注ぐ中、朝から晩まで部活に明け暮れていたせいで私の肌には靴下とTシャツのあとがくっきりとできていた。
恵ちゃんも部活はあったらしいが室内での活動のみなので肌は相変わらず白い。

「はあ……私なんかもう首筋ボルトなのに……」

「私は健康的でいいと思うよ」

恵ちゃんの慰めの言葉に少なからず救われたところでチャイムが鳴った。

「これ何のチャイム?」

「大掃除の予鈴だよ」

「その後は?」

「始業式」

ふむふむ。朝のSHRで先生の話を全く聞いてなかったから全然予定を把握していなかったが、恵ちゃんの説明でようやく理解した。

「んじゃあ、また後でね」

教室掃除の恵ちゃんとお別れして私は自分の担当場所である地歴公民準備室へむかった。


大掃除といってもやることは掃き掃除と拭き掃除くらいなのでほとんど時間が余る。

「せんせー、拭き掃除終わりましたー」

「おー、そうかー。あ、みょうじ、お前二学期は何処掃除するんだ?」

「えっ、掃除場所って変わるんですか」

「そうだぞ。知らなかったのか」

「知りませんでした」

「お前なあ……」

苦笑いする先生はまあいいと言ってプリントの山を抱えて教室を出て行った。
そっかあ、掃除場所変わるんだ。別にこのままでいいんだけどなあ。
あ、でも図書室掃除とか楽しそうかも。あとで恵ちゃんと相談しよう。
同じ掃除場所の他クラスの子と話しているといつの間にかチャイムが鳴ったらしく窓の外を見ると生徒たちが運動場に集まってるのが見えた。
慌てて廊下にでて小走りで走っていると見覚えのある背中が見えたので隣に並ぶと少し驚いた顔をされた。

「やあ原田くん。久しぶり」

「久しぶり」

「急がなくていいの?」

「まだ大丈夫だろ」

「まじでか。じゃあ歩こっと」

はっ、当たり前のように隣に並んだけど果たしてわたしは原田くんと一緒に運動場に行ってもいいのだろうか。ひょっとしたら原田くんは誰かと待ち合わせていたかもしれない。

「原田くん、一緒に行ってもいい?」

今更ながらそう訊くと原田くんは目をぱちくりさせた。やばい、まずかったかな?

「あ、その、駄目だったら駄目でいいんだ。ただ一人でいくの寂しいなぁーって」

「駄目なわけないだろ」

「あ、そう?よかったあ」

運動場まで地味に遠いからなあ。よかったよかった。
原田くんと世間話をしながら歩いているとあっと言う間に運動場に着いた。生徒の集まりはまだ疎らで私はその中に恵ちゃんか吉貞くんはいないかなあとキョロキョロ辺りを見渡してみると、木陰に恵ちゃんが立っているのが見えた。

「じゃあ、わたし恵ちゃんのとこいくね」

一緒に来てくれてありがとう、そうお礼を言って原田くんとお別れして恵ちゃんのとこに行くといつになく恵ちゃんは何故だかそわそわしていた。どうしたの?と訊いてみても何でもないよの一点張りだったからそれ以上追及することはあきらめた。どうしたんだろう。トイレにでも行きたいのかな。
結局そわそわの理由はわからないまま、私は長ったらしい始業式を直射日光をがんがんに浴びながら聞いたのであった。








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