「また来たんですね」


にこり。

厭味を口にしてやる。目の前には同じように笑う僕の兄。本当に良く似たものだ。この笑い方といい憎たらしいくらいに。

それにしても双子というものは厄介すぎる。この間も交際していた女性を取られた。まぁそれ程好きでは無かったので、まだ良いほうだが。けれど持ち物まで一緒だったときには吐き気がした。なんで貴方とお揃いなんですか最悪。夢なら覚めろ。


「なんです?来ては駄目なことでも?」
「わかっている癖に」
「くふふ」


嫌いだからでしょう?、と、なにが可笑しいのかクツクツと喉を鳴らし笑いだす。ふと気づいた。いつもと何か違った兄。



――…甘い匂い?



女性の香水だとわかる頃には日が暮れる時間だった。何かチリッと胸が痛い。原因はわかりたくもない真実で無理矢理に向かわされる羽目となる。あぁ最悪です。ため息混じりに呟きながらも窓に目をやる。ふわりと浮かぶ雲。淡い桃色だった。



なんて純な色だろう、なんて。



戻れない、決して戻れないのだ。純粋な僕らは。全ては貴方の所為。




あの時貴方が、好きと言った日から。











「にぃさ っ…ひ、」
「気持ち、いいですか?」
「や、ぁっ あん!」


両の膝裏が兄さんの肩に乗り、何とも言えない質量が奥を犯す。その度、ぬちゃりぐちゃりという厭らしい音に耳までも犯される。不快でいっぱいいっぱいな僕には、プライドに泥を塗りたくられた気分で仕方ない。

先程のあまりの衝撃に耐えられなかった僕はすぐにドロリと白濁とした液を吐き出す。すると兄さんのモノを締め付け、僕とひとつになっていることを改めて実感させられた。

そのことで上機嫌になった兄さんは、腰を上下に揺さ振る。達してから息つく暇もなかった僕には、なんとも言えない快感が駆け巡り、口から悍ましい程に甘ったるい声が易々とこぼれおちた。


「だ、め…うごいちゃぁ!」
「僕はまだですから」
「や…ひぃ゛っん…んあぁ」
「む、くろ」
「そこぉ、やだ、ぁ、つかないで」
「あいしてます僕のむくろ」





逆上せる、熱い。




そんなに本当に愛おしそうに囁かれて見つめられると、恥ずかしくて死んでしまうじゃないですか。快楽に溺れきった僕はどうしていいかわからないのに。見ないで。


「うぁ゛…またイっちゃ」
「あぁでは、いいところを突いてあげますね」
「ゃっ!ひにぁっ…あぁっ!」
「…く、ぁ」


じわりじわりゆったりと温かくなる体内に疲れが和らぐ。大事そうに壊れないように優しく抱きしめられた。そんな兄に胸が苦しくなる。やっと息を吸い込めた安心感からか心地好い温かさに泣きそうになった。



「もう、いっかい、」



この行為で初めて求めた。いつの間にかだけれど。もう少しこのままがいい、なんて、馬鹿馬鹿しいけれど、もっと貴方に愛されたいと願う自分がいることは確かで。少しは自分の気持ちを素直に受けてみてもいいですよね。




「兄さん、僕もあいしてます」







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