※骸に少しの自傷癖、相手は不明




ねえ誰か勇気をください。

僕だって臆病なんです。たったひとつの刃。ただそれだけ。それだけなのに、できるのは微かな血を滲み出すことしかできない臆病者。怖いんですよ、誰かにいつかこんな弱く脆い僕の本性を見られるんじゃないかって、それは千種だって犬だってクロームだって。仲間が、僕の傍にいる人間が、居なくなってしまうのではないか、と。そんなのは嫌だ怖い…そう思うとこんな刃なんて糞だ、なのに、また恐怖で震え上がる僕は糞以下のほかになにもない生きる価値があるかも解らない。

再度腕に目をやるとピクリ、ピクリと痙攣が走る。皮膚に早く疵をつけてくれと急かすかのように距離を縮めてゆく。つい情けない声が喉から絡まり縺れ合い声として吐き出された。ああみっともない。それと伴って刃が離れ、僕の皮膚ではなく、フローリングへと疵をつくった。衝撃に耐えられなかったからか深い疵痕となっている。紛れも無くそれは僕へ刻まれる筈だった疵。何処か虚しいと泣き叫んだ。

よくよく物思いに身を任せ考えてみると疵をつけれなかった理由があった。それは、他人事でいたから。疵をつける行為は決して容易いことではない、解っているのだ。他人事で澄ましていた僕自身でも。



もう疵だらけで生きたくない。



純粋にそう思えた。だから目の前で少し苦笑混じりに手を差し出す彼に感謝する。こんな僕を見ても逃げなかったことに驚いたが、取り合った彼の手の平の温かさにも至極驚いた。ああこれで自傷癖も直りそうだ。


「くふふ、貴方のお陰ですね」








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