ハレム企画 外伝(名前変換) | ナノ
=ローと后 A=


政務の合間、まだ日の高い時間と言えど…王がハレムを闊歩する姿はそう珍しいものではない。もちろん急務に追われている時は別であるが、ここ一年ほどは有能な側近を従え、機嫌良さげに口角を上げた王を日中のハレムでよく見かけると言う。情報源は噂好きの後宮に仕える小間使いの女たちだ。


「"月のある夜"に付け足して、"太陽の昇る昼中も**様"とハレムの女たちが皮肉を乗せて噂し出すのも時間の問題ですね」
「フン、言わせておけ。大体最初のソレを言い出したのはお前じゃなかったか?」


幼い頃からの付き合いである現王ローとその側近であるペンギンが彼らなりの軽口を叩きながら向かうのは、会話にも上った后である**の部屋だ。以前王の衣装係だったヴィオラも苦労していた趣味の悪さは、衣装の採択だけでなかったらしい。

国の第一王子が生まれてから三月を過ぎた頃――我が子の眠る真横で羞恥に身を捩る**を抱くという遊びを見つけてからというもの、王子の昼寝時を狙っては度々王が姿を現すようになっていたのだ。もちろん目覚めた王子がぐずりだした時のために、廊下には忠実なる側近が控えている。

今日もまた真昼間からあの不健全極まりない光景を見せつけられるのかと思うと、后の部屋へと向かうペンギンの足取りはどこか重かった。



*****



王が部屋の扉を開けた時、そこに控えの女官たちの姿はなかった。その無防備さを名目に、今夜は仕置きを与えてやるかとニヤリ笑いながら、王が寝台を覆うように垂れ下がる薄絹をゆっくりと捲る。

大小たくさんのクッションに埋もれるように丸まった背中とその腕の中で眠る我が子の姿を見つけ、伸ばしかけた腕がふいに止まる。すうすうと聞こえてくる寝息には幼子の小さなそれとは別に、どこか甘やかさを含んだ吐息が混じる。

寝台に片膝を乗せたまま、王はしばし目の前の光景に目を奪われた。普段自分を危なっかしいほどに真っ直ぐ見上げてくる、従順な瞳は今は閉じられている。滑らかな白い頬には伏せた長い睫毛が影を落とし、夢でも見ているのだろうか…時折ぴくりと瞼が動く。


「……んぅ、ん…」


寝苦しそうにわずかに眉を顰めながら小さく上がった**の声に、王は金縛りが解けたかのようにふっと肩の力が抜けるのを感じた。そして中途半端に乗り上げていた自らの体を、寝台に横たわる**の反対側へと移動させた。

すやすやと眠る王子を挟むように川の字になったまま、じっと彼女の寝顔を見つめる王。よく見るとうっすらとかいた汗で、**のよく手入れされた長い髪が額に張り付いている。

ふと思いついて寝台横の飾り台に置かれてあった扇子を手に取ると、王はゆっくりとその手を動かして眠る二人へ心地のいい微風を送った。**の眉間の皺は薄れ、次第に気持ち良さそうな寝息が聞こえてくる。


そしてそんな穏やかな時間がどれくらい過ぎただろうか。ごろりと寝返りを打った王子の手が**に当たり、その微かな衝撃に彼女の閉じた瞼がうっすらと開く。


「やっと起きたか」
「……ぇ…?」
「寝惚けて自分の夫の顔も忘れちまったのか?」
「…っ!ろ、ロー様…っ」
「また仕置きの理由が増えたな、フフ」
「えっ…あの、どうして…えっと…?」


ぼんやりと霞がかかったような寝起きの回らぬ頭で必死に目の前の光景を整理しようと、**は忙しなく瞬きを繰り返しながら辺りを見渡すが。きょろきょろと泳がせた彼女の目が最終的に行き着くのは、意地悪く笑う王ただ一人で。

力強いその灰色の瞳に吸い寄せられるように、視線も思考も動きも何もかも奪われてしまう。


「おい、もういいだろ。そろそろペンギンを呼ぶぞ」
「え…?」


そう言うが早いか、未だに状況が掴めていない**を置き去りにしたまま、王は廊下に控えているであろう側近の名を呼んだ。すぐさま姿を現したペンギンは、まだ着衣の乱れていない様子の后にわずかに首を傾げながらも、寝息を立てる王子を起こさないよう注意を払いながら早足で部屋を出て行った。


「次はおれの番だ」


ニヤリと口端を持ち上げた王は呆然と座り込んだままの**の肩を掴むと、ゆっくりとその身を沈めていく。二人分の重みを柔らかく受け止めた寝台の上、**の首筋に顔を埋めた王がその真っ白な肌へ甘い痛みを散りばめながら、丸く膨らんだ双丘に舌を這わせた。


*****
「ローと后 A」
 (written by 小鳩/slow pain)


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