ハレム企画 外伝(名前変換) | ナノ
=シャンクスと乳母=


彼が隠れる場所は、大体決まっている。宮殿には幾らでも空き部屋があり、案外、人に見つからずに済む空間は多いのだ。今日も今日とて、くだらぬ本の感想を書けと押し付けてきた外国語の教師を疎んじ逃げ出した挙句、彼は埃っぽい絨緞に直接座り、古びた長椅子に背中を預けて読書に耽溺している。なお、読んでいるのは最新の生物の論文だ。外国語の授業は好きではないが、読書の幅が広がったことだけは彼も素直に感謝していた。

太陽が、少し地上に傾いてきた時刻、静寂しか存在しなかった部屋に人の気配が近づいてきた。読書中とはいえ、誰にも見つからぬよう辺りに注意を払っていた彼はすぐに気づき、目の前にあった大ぶりの衣装棚に隠れ、やり過ごす事に決める。たまに召使たちの逢引に出くわすことがあるので、彼はこういう事態に慣れていた。

本が読める程度の光を取り入れるべく扉を細く開けると、彼は再び分厚い本に目線を落とす。召使同士の逢引ならば一刻もせぬうちに終わるだろうと踏んだのだ。何せ彼らは忙しい。それならば特段騒ぎ立てる必要もない。ハレムならいざ知らず、ここは宮殿。現王の大らかさもあり、召使同士の欲求解消は多少の目こぼしをされていたから。

彼の予想したとおり、忍び込んできた気配は2人分。ひそめた声は男女のものだ。音量が段々大きくなってくるところから容易に分かるとおり、彼らは、彼の隠れている衣装棚の前の長椅子の上を逢瀬の場所と定めたらしい。女の声は微かすぎてよく聞き取れないが、どうも拒否をしているふうなのは感じ取れた。男はといえば、意に介しているのかいないのか。

「お、お待ちを。このような所では」
「鍵はかけた。誰も来ないさ」
「でも」
「信じられないか?」
「そのようなことは……。お願いです。どうか、おやめ下さい」

彼が本を閉じて、扉の隙間から外を覗き見たのは些少の好奇心と、これが強姦であった場合、さすがに止めなければならないだろうとの至極まっとうな感情からだった。端た女一人が犯されたぐらいで胸を痛めるほど彼は優しくないが、憩いの場所を汚されては気分が悪いのだ。

「おやめください、"王"……!」

「その単語」が耳に飛び込んできたのと、赤い髪の男を見とめたのと、そして女が誰であるか気づいたのは全て同時だった。上背のある男の腕の中、何とか囚われの身から脱しようともがいているのは、なんと彼の乳母**である。だが咄嗟に飛び出しかけた彼を、「王」と呼ばれた男の瞳が捕らえた。本当に目が合ったのかどうかは定かではないが、彼はそう思ったし、実際動けなかったのだ。

王は、彼と目線を結んだまま、乳母の首筋に唇を落とした。片腕で逃がさぬように彼女を抱き、もう片方の腕は慣れた動きで背中を辿る。王の大きな手が、薄い衣の上から形よい尻の線を辿ったとき、びくりと**の身体が震えた。長い中指で、中央の割れた部分を幾度もなぞられるたび、彼女の抵抗は徐々に力を失っていく。

「王……」

最後の抵抗がやんだ辺りで、王は彼から視線を外し、両の腕で**を抱き締めた。

――抱かせてくれ

およそ王たる者にふさわしくない懇願は、彼の耳にも明瞭に聞こえたのだった。





長椅子が激しく揺れるたびに塵は宙に舞い、窓から射し込む光がそれらを輝かせ、部屋を彩る。横たえられた頃、唇を噛み締めて声を堪えていた女からは、時間の経過とともに淫靡としか言いようのないあえぎ声が低く高く漏れいずるようになっていた。慎ましやかな衣装は左右に大きく肌蹴られ、全てが剥き出しとなった彼女の身体は、今、王だけに捧げられている。

「王、そろそろっ……あっ」
「政務は任せてあると、言ったろ? 口、を、挟むな」
「はい……。ん、ふぅっ!」

何とかこの快楽を中断させようとする彼女を優しく咎めるべく、王は彼女の豊かな胸に手を伸ばす。尖った桃色の先端を幾度も弄うたび、女の腰は自然と揺らめいて、深みへと王を誘った。繋がったまま、王が彼女の両脚を掴んで思い切り開かせると、光にさらされた陰なる場所が、しとど濡れて光っているのが露わになる。

「あァ、"よく見える"」
「お許しください。このような……!」
「"誰も"、見てやいないさ」

優しい手つきで彼女のすべらかな頬を撫でながら、だが全く無遠慮な動作で自らを奥まで捻じ込んでくる彼の雄の動作に、彼女は行為の終焉を感じたのか、全身を強張らせて明瞭な拒否の仕草を見せた。どこか必死な表情を怪訝に思ったのか、紅潮した頬を慈しむ手はそのままに、王は彼女の紅唇に、少し乾いた自らの唇を寄せる。

「どうした」
「今日は、今日だけは、あの、私……」

育ちの良い彼女が言えずにいる内容を、王は瞬時に察した。ハレムでは、その手の医学が発達しているゆえに。しかし彼女の願いは、王の願いとは背反しているものだ。いくら愛しい女からの嘆願であるとはいえ、どちらを採るかといえば、それは勿論。

「私……んんっ! お、王っ! お願いです、王。シャンクス、さまっ」
「……**、頼む」

 ――お前との子が、欲しいんだ

拒否の言葉を漏らすことさえ許されなかった。成熟した雄の動作をしながらも、少年の如く唇を貪ってくる王をせめて目一杯拒否しようと、**は細い腕を男の肩へと伸ばした。





彼は、そんな二人の全てから目が離せずにいる。色づいた肌も、豊満な胸から細い腰へと繋がるラインも、王をくわえ込む濡れた場所も、全てが彼の心を奪ってやまないのだ。いつしか彼は、本能に突き動かされるままに自らの股へと手を伸ばしていた。衣類の合わせ目から雄である象徴を取り出して、触り始める。幾度も幾度も女を穿ち、濡れたままに出てきてはまた侵入する眼前の雄を、自らの其れと妄想の中で重ねながら、掌は段々としごき上げる速度を増していった。

会話それ自体は、所々しか聞こえてはこない。何やら必死に乞うている**の掠れた声と、どこか苦しげな王の声。突然、彼にもよく見えるほど大胆に開かれた彼女の脚と下腹部に、手の中で熱を発するものがびくりと震え、より膨張する。何やら声が潜まった後、王の動きは激しいものとなった。あえぐ声は、もう聞こえない。唇が重なっているのだと彼には理解できた。それでも時折漏れてくる**の甘い声と、長椅子のきしむ音、何よりも2人の繋がる部分から発せられる音が、目の前で繰り広げられる痴態を彩る香辛料となる。

激しい動作を拒否したいのか耐えたいのか分からないが、彼女が王に伸ばした手が、ふいに見えた。しかし何故か、その手は男の何処をも掴むことはない。白い手は空を握り締め、静かに下ろされる。

その後は、誰しもが波に乗りきるだけ。王が彼女の最奥で果てたのと、彼が自らの掌に粘ついた液体をぶちまけたのは、ほぼ同時だった。





息も整わぬ風情の**を抱え上げ、自らを挿し込んだままの王は、衣装棚のある方を向いて座り直す。より奥に男を受け入れる体勢になった彼女が漏らす艶やかな声を楽しみながらも、愛撫の手を止めはしない。散々弄られ、こすられて、粘膜を晒した芽を撫ぜ続けていると、荒い息はいつしかまた甘さを宿していき、きつい収縮で男を追い出しにかかっていた内部も柔らかさを取り戻していく。こうなったら、快楽は幾つも連なり続けるだけだ。そうなるように、王は彼女を抱き続けてきた。溢れんばかりの愛情を、快楽に変えて。

「なあ、**」
「は、い」
「……孕めよ」

王は、彼女の答えなど待ってはいない。強引に**の首を巡らせ空気を奪うと、再び彼女を愛おしみ始めたのだった。常より熱く激しく、独占欲に満ちた情事の訳は、恐らく――。


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「シャンクスと乳母」(written by まり緒)


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