ハレム企画 過去の物語(名前変換) | ナノ
=現王ローと第一の寵姫=


ハレムのとある一室。甘い、篭った声が石の壁に吸い込まれては消えていく。

現王は基本的に忙しい人間だが、時折日中にもかかわらずハレムの女たちのもとを訪れることがある。高い位置から陽が射し込む昼下がり、最も暑い時刻でも宮殿の温度は一定に近いように保たれているが、この部屋だけは熱かった。薄い布を幾重にも重ねた、繊細かつ豪奢な絹の腰履きは腰まで捲れ、女のよく手入れされた滑らかな脚と腿と尻を余すところなく外気に触れさせていた。貴族らしく真白い肌は、今は花びらの色で男を誘う。

「……っ!」

肌蹴た胸のまま手のひらを窓の桟について、それでも声を堪えるのは生来の誇り高さ故か。だが王はそんな姿を見逃さない。

「おい」
「……はい……」

王の低く鋭い一言に女は頷き、彼の後ろからの律動に合わせて甘く高い声を部屋に撒き散らす。窓の外をいつ誰が通るか分からぬまま、陽射しのもとで立ったままの性行為を強要されている女は、しかし王に逆らう素振りは微塵も見せない。「乱れろ」と言われた分だけ乱れてみせる。自らの誇りすら抑えて。彼女の気位の高さをよく知る王は、そのためか、たまに真昼間に彼女の部屋を訪れては、こうして獣めいた体位で交わりを楽しむのだ。

いかに大貴族の娘といえどハレムにいる限りは王の所有物であり、所有物である彼女が王の行為に逆らえるはずもない。ハレムにいる他の女達に対しては狭量な猫の如き態度を見せる彼女は、王の腕の中でのみ子猫に返る。ひたすら素直で愛らしいばかりの子猫に。

「いつまで経っても慣れないな。言ってるだろ、声は我慢するな」
「も、申し訳もっ……ございませ……ん」
「謝罪など要らぬ」

彼女の髪を強く掴み、後ろに引く。途端に締まった内部の脈動を感じつつ、勃ち上がった自らの肉を一層深く捻じ込み、彼は笑いながら耳うった。

「いいから、乱れてみせろ」
「仰せ、のっ、ままに……ああっ!」

窓の格子に手をかけて、露わになった身体を曝け出しながら従う女に、王は一つ満足の息を吐いた。と、部屋の扉がノックされる。「**様、ベロニカでございます」との声は、彼女付きの侍女だ。息をのんだ女の胸を強く掴みながら、彼は息すら乱さず言い放つ。

「入れ」
「お待ちを……! それ、は……」
「逆らうのか? **」

動きを止め、至極弱い力で胸を嬲る彼の声は至って愉しげだが、さすがに彼女も切羽詰まっているのか彼の真意には気づかなかったようで。諦めとともにゆるゆる首を横に振り、健気にも「いいえ」と絞り出してみせたのだった。

「声は抑えるなよ」
「はい……っ」

女が頷いたのを確認すると、掴んでいた髪の束を放し、王は再度「入れ」と声を張り上げてみせた。

「失礼します」

王の言葉に応えて入ってきた侍女は一瞬怯みを見せたが、さすがプロと言うべきだろう。「ご実家からの書簡です」と押印付きの手紙をテーブルに置き、うやうやしく一礼すると、すぐさま嬌声の響く部屋を後にした。扉が閉まると同時に彼は動きを止める。

「誰か居た方が具合がいいな」
「そんなっ、あんっ……ことは……」
「まあいい。……ああ、今夜は満月だ」

鼻でわらってから彼女の腰を抱いて、「お前が来い」と一言。耳朶に挿し込む声は、こんなときだけ密やかだった。





「月のある夜には**」と実直なる側近が言い当てたように、彼は月明かりの眩しい夜を選んで**を閨に呼ぶことが多かった。その動機は酷く単純だ。

「王、こ、このような」
「いいから見ろ」
「あっ……!」

下から腰を突き上げられて、切羽詰まった声が細い喉から溢れ出た。大鏡の前で椅子に座ったまま、後ろから女が抱かれるかたちで交わってから、どれくらいが経過しただろう。明るい月光は彼女の頬の火照りや滲み出る汗、亡羊とした瞳、そして肉を挿し込まれている場所すら明瞭に大鏡に映し出してみせた。背後から膝裏を抱えられては隠そうにも隠せないし、何より王がそれを望まないのを知っていたから、**はひたすら羞恥に耐えている。

彼の腰の動きと言葉に敏感に反応する可愛らしい内部は、幾度めか分からぬ絶頂を迎えた。繋がった部分から感じる肉を食む女の動きに、彼も軽い酩酊をおぼえ。

「目を逸らすなよ」
「あ……、王……」
「返事は」
「は……い……」

女の従順さへの褒美として、王は熱い耳朶に軽い口付けを贈る。皓々とした夜はこうして更けていった。

だが、これほどに熱い夜を過ごしても、王が寝所に彼女をとどめることはない。事が終わると自らの部屋へ戻すのは、彼女だけに限らず、どの寵姫たちに対しても同じこと。彼と共に朝を迎えていたのは、今も昔もただ一人だけだったのだ。

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「現王ローと第一の寵姫」(written by まり緒)


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