「何サボってんだ大王(ジジィ)」


昼休みを悠々自適に過ごし、午後からの裁判が始まっているにも関わらず。亡者の居ないそこに、ズン、と重くなる一声。その空気に法廷の雰囲気は焦りで埋め尽くされる。何やってんですか、大王!という獄卒の意見で。

それもそのはず、亡者を裁く閻魔庁の頂にいるはずの閻魔大王が裁判もせずに書類に孫の坊の似顔絵を描いて自慢しているのだ。


何アホなことを・・・!

と思われるがこれが通常運転なので、焦りはしても同情はしない。これが地獄の獄卒というものだ。


「いや、茄子おまえ何言ってんの?」

「えー?えへへ!ちょっと閻魔様と鬼灯様のナレーションしてみた!」

どうだった?と秦広庁から書類を持ってきた地獄のチップとデールこと唐瓜と茄子がこの場の雰囲気を和ませる。本人たちはその気なんて微塵もないのだけれど。


「いきなり語りだすのでどうしたのかと思いました。」

大王に粗方の制裁を加えた鬼灯が巻物をくるくると直しながら言った。

その脇で何本かの巻物が大王横の壁に刺さっているのは御愛嬌であろう。

そしてその巻物は亡者の記録が書かれてあるやつじゃないんですか、なんて質問はお口チャックである。


「もー、鬼灯くんも少しは手加減してよね」

あれだけ殺られておいて手加減してよね、で済ませられるのは大王だけである。


「お孫さまの自慢はいいですが、書類に落書きはしないでくださいと何度も言っているでしょう」

このあんぽんたん!
と大王の頬を金棒でぐりぐり。
そんな何回も落書きしてんですね、大王。
なんて思ったのは唐瓜だけではない。


「ご、ごめんてば。」

「全く貴方は毎回毎回、」

「そ、それより!芙蓉ちゃんは?」

「・・・芙蓉さんに用事ですか?」

大王が久々に爆発するであろう鬼灯のお母さん節を回避すべく話題をかえる。

芙蓉と呼ばれる彼女は、鬼灯の古い馴染みだ。神代からの付き合いで、年数でいうなら閻魔大王よりも付き合いが長い。昼休み前までこの鬼灯と一緒に大王の補佐をしていたはずが、休みを過ぎても戻ってくる気配がない。

勤勉な彼女に何かあったのだろうか、

大王は心配をしながら彼女の相方と言っても過言ではない鬼灯に尋ねた。


「ああ、彼女ならお香さんに呼ばれて席を外しています」

何か言伝でもあるんでしたら言っておきますが、と通りすがりの獄卒に資料を戻す様頼み巻物を渡した。


「なんだ、それならいいけど。
芙蓉ちゃんも忙しい身だもんねー」

困っちゃう、なんて台詞に、茄子が大王がサボらなかったらある程度進むよなーなんて言いそうになったのを唐瓜が長年のカンから察知して音になる前に口を塞ぐ。

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