番外編 | ナノ


「で、結局どーするよ。」

コーラの氷を噛み砕き終えた炯至がまだ言い合っている2人とポテトをむしゃむしゃと食べている黒子にきいた。
松下と卜部はどーすっかなあ、とお互い思案顔をする。あーでもないこーでもない、と炯至と卜部と松下は言い合うが意見はまとまらない。

それを見ていた黒子がおもむろに口を開く。


「それはそうと、卜部くんと松下くんは部活あるんじゃないんですか?」

「「あ」」

まさに盲点である。

黒子はそんなコトだろうと思った、と言わんばかりに溜め息を吐く。


「炯至くんも、二軍と三軍のバスケ部は全中予選の応援に行かなきゃいけないんですよ?」

「え、?!」

俺そんなん聞いてねぇ!
とばかりに炯至は慌てる。


「えー、じゃあゴールデンウィークの予定パア?!」

あんなことやこんな事いろんなコト考えてたのに!部活のばか!とちゃむが若干、というかガチで泣きそうになりながら所属しているサッカー部を罵る。


「は?マジで?ガチで?」

「マジで。ガチで、です」

黒子が炯至に鸚鵡返しにいうと項垂れた様にちゃむと一緒に机に突っ伏した。

基本的に快楽主義というか、楽しければ何でもいいという2人は性格もさることながら考え方も似ている。結果に至るまでのアプローチの仕方の差異はそれこそオツムの出来の差であろうが、根本的に松下と炯至は似ているのだ。


「・・・イヤだ。今年はゼッテェ遊ぶ。」

「だからみんな部活だっつってんだろ」

暫く黙っていた松下は唸りながらそういった。すかさず卜部が否定するが、それを炯至がとめる。


「いや・・・、とべちゃん、くろたんよく考えてみ?俺ら中1。次のGWは来年の中2だよ!」

力説する炯至はばっと顔をあげてキラキラといい笑顔だ。あたりまえです、炯至くんアホですか、と黒子は通常運転だ。
だがそれこそ幼馴染み。
炯至にとっても通常運転だ。
気にするまでもなく、続ける。


「でだ!中2の来年にゃ俺らそれぞれの部活でレギュラー張ってるだろ?」

「確定事項なんですか、それは?」

「まあ、ありえるな」

「まあオレエースじゃしw」

「「「ハッ倒すぞ」」」

「申しわけございません」

どや!とばかりに言った炯至の台詞に黒子のみが暗色を示すが、後の2人は当然というように肯定的だ。もちろん、松下のエース宣言には3人ともイラッとキタようで厳しい追求があったことだけ追記しておこう。


「まあそーなるとそれこそ来年は遊べるワケねぇじゃん」

何事もなかったかの様に炯至は続ける。
HPが0のエースは放置だ。


「それもそうなんですが・・・」

「うし、じゃあ今年は遊ぶか」

食い気味に卜部がいい笑顔でそう言った。
だからオレはなっからそう言ってんじゃんかーと言わんばかりに炯至は溜め息を吐くが、またややこしい事になりそうなので卜部と黒子の行方を見守る。卜部の身の変わりようの速い事はまあ、彼の処世術の1つなのだろう。


「黒子、応援も大事なことだけどな、遊ぶコトも大事なことだ!」

と松下が卜部を援護する形で会話に混ざる。

否、何故お前。
どっからでてきた。

炯至はそんなツッコミが飛び出そうだが、ここは大人な対応といこう。もちろんスルーするに決まっている。それになんかちゃむがいうと胡散臭ぇんだよな、なんて今更言わなくてもあとの卜部と黒子には解るだろう。なんてったって2人の顔を見たときに何故か頷かれたのだから。


「あ、わかります。」

黒子さん、それ言っちゃダメっすよ
ハイ、お口チャック!


「まぁな、部活も大事だけど、中坊は中坊らしく遊ぶのも必要って事だよ」

「はたから見たら何だそれ、とか思うんだけどなー」

「なー」

まあ何にせよ、ゴールデンウィークはガッツリ遊びたい派な炯至は最初から乗り気な松下と初めは難色を示していたが意見を変えた卜部にのっかる。民主主義な黒子に対して3対1なポジションを掲示する。これでnoとは言えないハズである。


「・・・、今年だけですよ?」

難攻要塞陥落である。
なかなかに頑固な黒子を落とすのは至難の業であるが、落とせないワケではない。炯至は内心ほくそ笑む。

今も仕方無いですね、なんて言ってはいるがどことなく雰囲気というか嬉しそうで楽しそうだ。こんな事を言うとせっかくの許しを取り消されそうなので炯至はちゃむからパチったファンタに口をつけて飲み干す。伊達に意地っ張りな黒子と10年近く幼馴染みはやってないのだ。卜部と松下を味方に着けた炯至に軍杯はあがる。


「あ!ちょっ、炯至てめ!それオレのファンター!」

「ふはははは!気を抜くちゃむが悪りぃんだよ!」

そんな会話をしながら。
なんというか、まず遊ぶことが決定したのである。


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