女帝
「キャアアア!!」
「跡部様ァァァ!!」
「素敵ィィィ!!」



跡部がリムジンから降りた途端、周りの女子から黄色い悲鳴が上がる。うるさいくらいに騒がしい声にぐっと眉をしかめる。


『景吾ー!』
「「「!!」」」


跡部がため息をついた時、聞き慣れた声が響く。
途端に周りは静まり返る。


「美麗…」


跡部の隣に並ぶと、おはよう、と笑顔を浮かべるのは、幼なじみの美麗だった。


「き…キャアアアアアア!!」
「美麗様よ!!」
「美麗様ァァァァ!!」


跡部よりいっそう大きな悲鳴が響き渡るが、美麗は気にもせず、むしろ満更でもない感じだ。


「お、おはようございます美麗様!」
「今日もお美しいですね!」
『当然よ。』
「あ、あの!よかったらクッキー食べて下さい!昨日作ったんです!」
『あらありがとう。』


ニコリと笑えば女子達は顔を真っ赤にさせうれしそうに叫ぶ。
ここまで同性に好かれる人は初めてで、苦笑いしか返せない跡部。


「…相変わらずすげェな。」
『まぁね。』


二人が肩を並べて校舎へ歩いていく姿を、女子達はポーッと熱に浮かされたような表情で眺めていた。


「……素敵。」
「氷帝学園の帝王と…女帝…」
「二人揃うと迫力満点ね…」
「綺麗…」
「跡部様と美麗様…お似合いだわ…」


跡部ファンクラブをも魅了する美麗の長い蜂蜜色の髪は日の光りに反射して金色に輝き、歩く姿はとても美しく。運動神経抜群、頭脳明晰、学年では常に二位。(ちなみに一位は跡部)

いつも跡部の隣にいて、女帝と呼ばれ崇められている美麗をこの学園で知らぬ者はいない。



to be continued...
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