日常
氷帝学園。世間からはマンモス学校と言われているほど、大きな私立。幼稚舎から大学部まであるくらい、敷地面積もかなり広い。伝統溢れる厳粛な雰囲気を醸し出しているが、実際はそんなよそよそしくはなく、むしろ騒がしいくらいだった。

その原因はこの二人。


『ちょっと!!それ私が楽しみにしていたものなんだから返しなさいよ!!』
「こんなもん持ってくるな!!没収だ!」
『嫌よ返して!!』
「ダメだ!」
『返せホクロ!』
「誰がホクロだ!俺様はそんな名前じゃねェ!」


氷帝学園一の金持ちで、あの跡部財閥の御曹司である跡部景吾。この氷帝学園の中身を変えた張本人。
そして氷帝学園一の美女として有名な跡部と幼なじみの雪比奈美麗。
この学園のツートップである二人の喧嘩は、もう日常茶飯事である。

『返してよ私のキノコ!!』


自分が持ってきたキノコを跡部に没収され返せ返せと喚き続ける美麗。


「なんでキノコを直に持ち歩いてんだ!弁当に入れてこい!!」
『いいでしょ別に!これは私のデザートなんだから!だいたいアンタわかってるでしょ?私の好物!』
「理解不能なんだよキノコがデザートとかバカかお前は!!」
『うっさいホクロ!!いいから返して!』
「だからホクロじゃねーって何回言えばわかるんだ!」
『一生わかってあげねーよ!』
「テメェ…!」
『! 隙アリ!』


美麗は一瞬の隙をつき、デザートのキノコ奪還に成功すると『フンざまーみろ!』と、勝ち誇った笑みを見せる。幼馴染みの嗜好についていけず、小さくため息をついた跡部は潔く諦めた。


「…はぁ。もういい。さっさと仕事に戻るぞ。」



氷帝学園をまとめあげる生徒会会長の跡部とその下につく副会長の美麗。間違いなくこの二人は、氷帝学園の要だ。


『はいはい。ったく、面倒くさいわね。』
「つべこべ言うな。働け」
『うっせーアホベ。』
「黙れバカ。」
『バカって言う方がバカなのよ。バーカ。』
「テメ…ッ」
『なに?やる気?』
「上等じゃねーか!!表でろ!」


「あ、あの…会長…副会長…」
「仕事…」


いつもいつも、ほんのささいなことで喧嘩をする二人を止める術は役員達にはなく。とりあえずは止めようと声はかけるがもののすぐに何事もなかったかのように自分達の仕事を再開した。

放っておいても大丈夫だろう。
彼らは喧嘩ばかりしているけれど、やる時はやる人達だから。


そしてこれがいつもの日常。
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