自宅訪問
いよいよ明日に迫ったテスト。
美麗は最終段階に入っていた。
今までやったテスト範囲を見直し、まとめる作業を繰り返す。

『ふー…』


ペンを置き、ぐーっと伸びをする。お茶でも飲もうと、リビングへ向かうとリビングには母がいて、お皿を洗っていた。


「あら美麗。休憩?」
『うん。お茶飲みにきた。』


コップにお茶を注ぎ、渇いた喉を潤す。
ちょうどお茶を飲み終わり、また二階に行こうとしたらチャイムが鳴った。


「美麗ー!ちょっと出てー!」
『はーい。』


母の代わりに、めんどくさそうにガチャリとドアを開ける。


『どちらさ…………』


バタン
何事もなかったかのようにドアを閉める。


「美麗?誰だった?」
『ピンポンダッシュみたい。』


ピーンポーン。
またチャイムが鳴る。しかしそれも無視。だが今度は連続で鳴らされる。

ピーンポ『うっさいんじゃボケェェェェ!!』


ついに我慢出来ずにドアを乱暴に開け、怒鳴る。


「クソクソッ!さっさと出ろよ!」
『何しに来たの!?なんでここにいんの!勉強は!?テスト明日なんだけど!?』


ドアの向こうにいたのはお馴染みのあのメンバー。なぜか全員いた。


「だからテスト勉強しに来たんだよ。」


跡部が当然のように言う。


『自分の家でやれ!!人ん家でやろうとするな!!』
「まぁまぁ、わけを話しますから。落ち着いて下さい先輩。」


鳳が宥めてくれたおかげで少し落ち着きを取り戻した美麗はで?と先を促す。


「美麗先輩の家に行こうって言い出したのは芥川先輩なんです。」
『ジローが?』
「だって野郎ばっかと勉強なんてしたくないC〜。どうせなら美麗ちゃんと勉強したかったんだ。」
「今日はみんなで勉強する予定やったんや。」
『…だからってなんで家に来んのよ……はぁ…仕方ない。』


ため息をつきながらも中に入れてくれるらしく、扉を大きく開けた。


「「「お邪魔しまーす!」」」


男八人が玄関を埋めつくすが、まだ余裕がある玄関。


「美麗先輩の家、かなり広いですね…。」
「少なくとも庶民の家じゃねーな。」
「綺麗だC!」


美麗の家は決して豪邸ではない。だが、それなりに大きい家である。清潔感溢れる、優しい雰囲気の家だった。


「美麗?結局誰だったの………あら。」


奥から姿を見せた母は男八人を見て目を丸くさせている。


『お母さん、コレ私の知り合い的な人達。』
「知り合い的なってなんだよ!俺ら友達だろ!?」
『え、そうなの?』
「え、そうだよな!?」


一瞬驚いた表情をした母は、やがてふわりと笑い、温かく迎え入れてくれた。


「美麗が景吾くん以外の友達連れて来たの初めてだわ。はじめまして、美麗の母です。いつも娘がお世話になってます。」


頭を下げた母に慌ててみんなも頭を下げた。


「狭い家だけれど上がってちょうだい。今ジュース入れるから。美麗、手伝って。」
『うん。景吾、私の部屋わかるでしょ?』
「あぁ。」
『みんなを案内してあげてね。』
「わかった」


美麗の部屋は派手でもなく、殺風景でもなく。
可愛らしい色合いの女の子らしさの溢れる部屋だった。天蓋付きのベッドがよく似合う。


「美麗の母親、すっげー美人だったな…幾つだ?」
「だよなー!あの人が美人だから美麗もあんなに綺麗なんだな!なんか納得。」
「美麗ちゃんによく似てたC!」
「生き写しだよなぁ…」


美麗の母、紗夜は中身や性格は全然違うが、容姿はそっくりだった。蜂蜜色の髪に赤い瞳。ただ瞳は丸みがあって優しい印象を受けた。美麗の目がつり目なのはきっと、父親に似たんだろう。ちなみに歳は今年で35。


『お待たせ………って、何してんの?』


人数分の飲み物を持ってきた美麗は、ドアを開けた瞬間眉をひそめた。
向日、鳳、宍戸はどこから引っ張り出してきたのか。美麗のアルバムを見ているし跡部は勉強机に向かい、広げてあるノートに何かを書いている。
日吉は本棚を物色し芥川は美麗のベッドで爆睡中。忍足に至ってはベッドに俯せになり、枕に鼻を押し付けていた。


「あぁー美麗ちゃんの匂いや。めっちゃいい香りやー!幸せやー。」


引き攣った笑みを浮かべる美麗は近くのサイドテーブルにお盆を置き、忍足に向かって踵落としを決めた。


『おぉおしぃぃたぁぁりぃぃぃ!!!』
「ぐっはっ!!」



綺麗に決まった踵落としは背中に直撃する。


『何しとんじゃワレェェ!!変態!死ね変態ィィィ!!』


踵落としをまともにくらい、さらにグーで頭を殴られる忍足だがその様子を見て、自業自得だと。同情する事のないメンバー。気がすむまで忍足を殴った美麗は唯一大人しくしていた樺地の隣に腰を下ろす。
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