ヘルプミー!
少しずつ暑くなってきた6月の半ば。氷帝では、一週間後に期末テストが迫っている。

土曜日。部活はしばらく休みなため、自宅にいる美麗は机に向かい、真剣に勉強をしていた。そんな時、マナーモードにしていた携帯が震える。
ディスプレイを見ればそこには“赤也”と表示されている。
携帯を開き、メールを読む。

to:赤也
sub:先ぱーい(泣)
――――――――
ヘルス!
ヘルスミー!


『…ヘルス?


ヘルプミーの事だろうか…
疑問だらけの美麗だがとりあえず返信する。


to:赤也
sub:
―――――――
意味わからないからもっとわかりやすく説明しなさい。

あと“ヘルス”じゃなくて
“ヘルプ”ね、ヘルプミーよ。


to:赤也
sub:
―――――――
すんません間違えたっス(笑)
英語苦手なんスよねー俺。

もうすぐウチの学校期末テストなんスよ!でも全然わからなくて!明日部長達に教えてもらう予定なんスけど、どうせなら美麗先輩に教えて欲しくて!

助けて下さいっ!
お願いしますm(__)m


『…立海も同じ時期なんだ。』


to:赤也
sub:
――――――――
弦がいるんだから大丈夫でしょ?


to:赤也
sub:
――――――
副部長すぐ怒るんですよ!
殴るし怒鳴るしで身がもたないんス!

だから先輩!
お願いします!このとーり!
今度なんか奢るんで!



“奢り"その単語を見た美麗の目がキラリと光った。


to:赤也
sub:
――――――
仕方ないわね。
行ってあげる。

奢り忘れたら
承知しないからね。
キノコでよろしく!エリンギね。


それから何回かやり取りをして、時間や場所を決めた。
幸村や真田達には赤也から言ってくれるという。

日曜日の昼から。
神奈川県の、〇〇図書館。
一通りやり取りが終わって、美麗は携帯を閉じる。
そしてまた勉強に取り掛かったが、30分くらいしてまた携帯が震えた。

今度はメールではなく電話。
画面を見ると“弦”と表示されている。
勉強を二回も中断された美麗は少しイラッとしながらも電話に出る。


『もしもし?』
《美麗か。さっき赤也からメールがあったんだが…いいのか?わざわざ神奈川まで…》
『いいわよ別に。それに、あんなに頼まれちゃ断れないしね。』
《だがお前もテスト勉強があるんじゃ…》
『一日くらい平気よ。だって私だもの。』
《…む、そうか。じゃあ明日、よろしく頼む。》
『任せて。じゃあね。』
《あぁ……迷うなよ?
『余計なお世話よ!!』


数分口論が続いたが、やがて電話が終わり、また勉強に集中した。しかし、またもや着信が。
いい加減頭にきた美麗はディスプレイをみずに電話に出る。


《もしも…『いい加減にしろコノヤロー!!勉強の邪魔すんじゃねーよボケ!!』ごめんなさいィィィ!!


いきなり怒鳴られ、電話の相手は訳がわからないままとりあえず謝る。


『…その声、岳人?』
《今さらかよ!つーかなんで怒ってんだよ。》
『なんでもないの。気にしないで。で?なんか用?』
《え、あぁ、あのさ!今暇?》
『勉強中。』
《暇ならさ、バンジーしに行かねー!?》
『だから勉強中だっつってんだろ。てゆーかなんでバンジー?
テスト前に暇?って聞いてくる奴初めてよ。』
《勉強ばっかじゃ頭パンクすんじゃん!気分転換にバンジー!行かね?》
『行かねーよ。行きたきゃ一人でいきな。それで二度と帰ってくんなバーカ!』



ピッと少し乱暴にボタンを押す。
よほどいらついているのだろう。いつにも増して毒舌な美麗だった。電話の相手、向日が美麗の最後の一言にずーんと落ち込んでいたのは知らない。
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