雨の理由 | ナノ




雨の理由




だめだ

だめだ

生理でも無いのに体が重い
雨か
ロケは中止かな
スタジオセットでできる撮影かな
どうせなら休みにしてくれないかな


どうも雨
低気圧には自分は弱い
すぐ頭痛におそわれる

全く平気になるわけではないが
慣れはある

でも
今日はなかなか辛い



「ーーー……はい、わかりました」


外は雨
予想通りロケは中止になった
予定の時間は変更となり、スタジオでの撮影になった

あまり飲みたくはないが
撮影に影響を出すわけにはいかない

常備薬といえるまでに
馴染みになった錠剤を口にし、水を含む

一緒に暮らしている恋人がいれば薬を飲む前に軽いモノを用意してくれるだろうが
自分は料理も下手だし
だるくてそんな気分にもなれない

時間ギリギリまで身体を休ませ、仕事場に向かった―――――――



「お疲れさまでしたー!」


強いライトの光
激しいフラッシュ

何パターンものポーズ
服だって何種類もあった

なんとか撮影を終え
スタジオから出ると
相変わらず雨特有の匂いに吐き気を感じた

楽屋に行き私服に着替える
これから自宅に帰るのも面倒くさいな


相変わらず身体が重い
いくら薬を飲んだと言えど
時間も経っているし
安静にしていたわけでもない


早く帰って休もう
幸い明日の仕事は夕方雑誌の取材があるだけだ
それもST☆RISHで受けるものだから1人ではない


楽屋から出て
すれ違うスタッフさんやモデル仲間に挨拶をしながら出入り口に向かう


「神宮寺」


不意に名前を呼ばれ立ち止まる
聞き慣れた心地よい低音に安堵する


「ひじりかわ…」
「お前、もう仕事は終わりか?」
「…うん」
「俺の楽屋に来い。着替えが済んだら出られるから…送っていく」


周りの目を気にしてだろう
自分にとって送っていくは一緒に帰ろうと同義である
付き合っているとはいえなかなか素直になれない自分も
やっぱり今日は弱っているらしい
何も言葉が出ず、ただ頷いた


「具合、悪いんだろう。準備が済むまで横になっていろ」


引っ張られるように真斗の楽屋に連れ込まれた

そのまま楽屋のソファに寝かされ、大きめのタオルをかけられる

「薬は」
「出る前に飲んだ」
「何か食べたか」


食べてないと言ったら怒られる
こいつはまるで母親だ

沈黙は肯定と捉えられ、真斗は形の良い眉を顰め小さく息をついた


「薬を飲むときは何か腹に入れるよういつも言っているだろう。おまえの常備薬は胃にあまり良くない」
「…わかってるよ」
「だったら…」


ああ もう
こんなことを聞きたいわけじゃない
いやだ いやだ
あたしは寝たいの
頭痛いの 気持ち悪いの


せっかくあんたに会えたんだから甘えたいの


黙ったあたしの顔を覗き込もうと近づいてきた真斗の首に手を回し
力ずくで抱きついた


あたしが求めてたのはこのぬくもり
戸惑いながらも抱きしめてくれるこの力強さ「はやくかえりたい」


早く帰りたい
早く帰って甘やかして欲しい

こんな時にしか素直になれない自分がきらい


「わかった。ちょっと離してくれ」
「はーい」


きっと家に帰ったら甲斐甲斐しく面倒を見てくれるんだろう

胃に優しいものを作ってくれるだろう


いつもはあたしの方が遅くまで起きているけど
今日はあたしが寝るまで髪を撫でてくれるだろう


今日はそんな恋人にベタベタに甘えてしまおう




明日なってちょっとでも元気になったあたしはまた素直に甘えられなくなるだろうけどね



END

初。レン受が好き。恋ちゃん好き。日々増えろーって念じてる。
ネタとしてはありきたり。デビューして3年くらい設定で。
あんまり詳しく決めてません。2人が付き合ってればそれでいい。

20120703



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