気まぐれ女王様 | ナノ




気まぐれ女王様




神宮寺と俺は
男同士ではあるが、付き合っている。

学園に入学するまでのすれ違いもあったが、
再び顔を合わせ、共に生活をし、お互いの気持ちを確かめた。

しかし、付き合っているからと言って
四六時中一緒にいるわけでも、常に会話をしているわけではない。

休日だからと言って一緒に出かけるわけでもない。
寮は同室であるし、お互いの存在を感じつつ各々のことをしていることが多い。

勿論いわゆる恋人との行為をする時もあるし、
神宮寺の気持ちを疑うこともない。

自分のペースを乱さず
共にあることが心地よいと思う。


今日も、休日であるが、
神宮寺は実家に用があると言って朝出かけて行った。
お互い財閥と言われる家を持つものである。
何かあれば未だ学生である自分たちも顔を出さねばならないこともある。

付き合ったからといい、ヤツの交友関係は変わらず、
相変わらず「レディ」と言いながら女子と一緒にいることもある。

しかし、付き合う以前からヤツは彼女たちときっちり一線を引き、
2人きりで出かける、ということはないそうだ。

確かに、学園で見かけるときは常に数人に囲まれており、
同じクラスの女子たちが言うには「神宮寺様はみんなのもの」らしい。
神宮寺はモノではないのだが。

そういうこともあり、俺は出かけると言っても、
何時に帰るのか、くらいしか聞かない。
実家関係であると、やむを得ず外泊になってしまうこともある。


休みのうちにやらねばならない、掃除や洗濯を終え、
授業の課題に取りかかろうとするが、五線譜の用紙がないことに気づき、
財布と部屋のカギを持ち、購買に向かう。



「おっす、聖川」
「来栖か」
「なんか珍しいな、お前が休みの日に購買にいるなんて」
「ああ、五線譜がなくなってしまってな」


購買で、来栖に会った。
相変わらず、トレードマークのハットに綺麗に彩られた爪。


「今日、レンは?」
「実家に用があるそうだ。珍しく朝早く出て行った」
「ふーん。てっきり、2人でいるかと思ったのに」
「…別に、常に一緒にいるわけではないぞ」
「うーん。まぁそうなんだろうけど。この前レンが」
「何か言ってたのか?」


あまり干渉するつもりはないとは言え、やはり気になる。
俺自身は今の関係や状態に不満はないが、来栖や一ノ瀬の前では何か話しているのだろうか。


「んー、大したことじゃないんだけどさ。お前、このところ実家のこととか
 あと、Aクラスは週末に課外実習あっていないこと、多かったんだって?」
「ああ…、確かにここ1カ月くらい週末はいつも…」
「で、昨日レンが明日は久しぶりに聖川がいる、みたいなこと言ってたんだよね。
 まぁでも今日はレンが都合悪いのか、アイツ案外寂しがり?甘えただから、さ」
「…そうなのか」
「俺一応お兄ちゃんだし。あいつ年上だけど末っ子気質あるから放っとけないんだよねー」


俺も兄なんだが。
ヤツが出かけることに干渉するつもりはない。
一度あまりにも外出が多く、不規則な生活を送ることがあり
少し口うるさく言ってしまい、大喧嘩になったことがある。

それ以来、自分が週末など出かける際にも最低限の連絡しかしていない。
元来、メールなど苦手である。

「じゃ、おれ那月と食堂で飯食うからー」という来栖を見送り、部屋に戻った。



部屋に戻り、簡単な昼食を済まし、再び課題に取りかかる。
ひと段落し、茶でも飲もうと簡易キッチンに向かうと、部屋にノック音が響いた。

はい、と声を出すと、一ノ瀬です。という返答。
一ノ瀬は神宮寺と同じクラスだ、おそらく自分への用ではないだろう。


「神宮寺は今日、出ているぞ」
「知っています。先ほど、レンからメールがあったので」
「そうか。それで、用件は?」
「レンに返すものと、借りたいものがありまして。レンから勝手に持って
 行っていいと言われたので、聖川さんがよければ部屋に入れていただけないかと」
「ああ、構わない」


「失礼します」という一ノ瀬を部屋にあげ、冷めてしまった茶を再び淹れる。
一ノ瀬自身はすぐに目的のモノを見つけたらしい。
よかったら飲んでいってくれ、というと静かに共有のテーブルについた。


「レンから何か連絡ありましたか?」
「いや…、ああ、携帯をしばらく確認していなかった」


一ノ瀬に促されるように携帯のディスプレイを確認すると、
着信とメールがそれぞれ1件ずつ。


「着信があったようだ」
「そうですか。私とメールをしている時にあなたのことを気にしていたので」
「俺のことを?」
「ええ。電話したのに出ない、メールも返ってこないと言っていました」


普段は自分の方が何もしないのに…
小さくため息をつくと、一ノ瀬がクスリと笑った。


「普段は彼もあまりメールなどしませんからね。"レディ"達以外には」
「そう、だな…」
「マメなところはマメですが、気まぐれですからね、レンは」
「確かに、な」
「でも、それはあなたが自分から離れない、ということを感じているからでしょう」


一ノ瀬にそんなことを言われるとは…思わず言葉に詰まる。
そんな様子に一ノ瀬は再び小さく笑い、部屋を出て行った。


「仕方ない、電話をしてやろう」


今日は気まぐれな彼の気分は俺に向いているようだから。


END

難産であった。
多分レンは女の子たちのやりとりはこまめにとりそうだけど、
スターリッシュのみんなとかはルーズそう。
ホントに急用なら向こうからしつこくしてくるでしょ、とか。

翔ちゃんはレンを弟のように思い、
トキヤは手のかかる大きな子供みたいに思ってそう。

20120716


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