愛してるんだよ、つたわるかい | ナノ




愛してるんだよ、つたわるかい



「寂しい、辛い思いをしていたし、させてしまったから、自分にできること全てをしてやりたい」

そう、誠一郎さんー恋のお兄さんーに言われたのは結婚を進めるために話すために2人で会ったときのことだ

誠一郎さんは恋が望むもの全てを与えてやりたい、と言った
俺たちの結婚は2つの大きな財閥間の出来ことである
しかも、今まであまりいい関係と言えるものではないのではなかったため、なおさらである

結果的に婚約は成立したが、そこにはかなり誠一郎さんの働きがあったらしい

ー黒崎さんが嘆いてたのを耳にした

「あれだけ"神宮寺"にこだわっていたあの子が、全てを置いて君と一緒になりたいと
言った。自分の1番欲しいと思うものは絶対に手に入らないと思っている恋だ、きっと
君との事も自信を持てない部分もあると思う。だから不安にさせるようなこと、泣
かせるようなことは絶対にしないでくれ」

まるで懇願するかのように告げられた言葉は俺の心にずっととどまっている

だからこそ、自らが思いつく限りの全ての不安要素排除していきたい、と思う


ーーーー


黒崎さんと誠一郎さんが出ていって、2人の間に沈黙が生まれる

最近、仕事と身の回りのことに忙しく、あまり恋と話していないし、ほぼ同棲状態の

自分の部屋にも帰っていない


「なんであんたがうちにいるのよ」
「・・・誠一郎さんとの打ち合わせと、黒崎さんから電話があって」
「ふうん・・・」
「おまえは」
「見てわかるでしょ。蘭ちゃんに無理矢理つれてこられたのよ」


ぶっきらぼうに言い放ち、恋は少し離れて隣に座った
テーブルの上には封筒が無造作に置かれる


「その書類・・・」
「ああ、なんかあたしの名義?の変更みたいな。姓が変わるから」
「そうか、・・・書かないのか?」
「書けるわけないじゃない」
「ん?」


そういい放った恋の寂しげな表情
結婚することが決まった今、何を戸惑う必要があるのだろうか


「なぜ、書けないのだ」
「それはあんたがよく知ってるんじゃないの!」
「何だ、唐突に」
「なっ・・・じゃあなんで・・・本郷家の子と一緒にいたのよっ・・・」


本郷家
恋とこの関係になるまで、許嫁であった家の名
僭越だが、自分と一緒になることになっていた家の子であるため、
パーティ等で恋とも面識がある

そして、俺と彼女がそういう関係であったことも知っている

そういえば、一十木に「マサって恋と結婚するんだよね?」とやたら確認されたのは

、このことか

彼女との婚約は一方的にこちらが断ったことになる
勿論相応の対応はしているが、迷惑をかけたことは事実である

婚約破棄は各々の父親が手続きを事務的に行ったこと
改めて当事者どうしで話したいとお互いに望んだことである


「婚約を破棄したことを、改めて謝罪したまでだ」
「じゃ、あ、なんで…家に帰ってこないの、メールだって、電話だって…」
「仕事と、あとはお前との婚約を進めるにあたり実家にもどっていた」
「そんなの、言ってくれなきゃわからないじゃない…!家に帰ってこないで、前の婚

約者に会ってるとこ見ちゃっ…」


そこから恋の言葉は原形を失い、嗚咽に変化していく
今までも仕事や実家の事情で家に戻らないことは、何度もあった

前の婚約者に会う
その事実がこんなにも恋に不安を与えていた


「恋…」
「もうっ…わかんない…」


泣きながら蹲る恋を力いっぱい抱きしめる
普段堂々としている身体が凄く小さく感じて、心が痛む


「俺はお前を裏切らない。彼女と会ったのもきちんと話をして、
 お前を安心させたかったんだ…」
「バカッ…」
「ああ、すまなかった。俺が愛しているのは、お前だけだ」


そうだ、俺はバカだった
婚約まで至った関係に安堵して、言葉を紡ぐことを怠ってしまった自分の責任だ


「恋、家に帰ろう」
「ん…」


恋の頭を撫ぜ、指で涙を拭う
涙の跡が残る頬に、唇に口づけを

言葉でつたえるには限度がある
言葉と共に、触れ、体温で伝えたい


愛しているんだ、伝わるかい



END


うわっ。無理やり感。
とりあえず終わりです。

本郷家とか適当です。
たまたま読んでた漫画に出てきたキャラの苗字。

けい



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