俺の肩でよければ | ナノ




俺の肩でよければ



事務所の打ち合わせで訪れたスタジオで見知った後ろ姿を発見
グループでデビューした奴らはうちの学園を卒業したアイドルとしては少し異色な存在だ


「おい、神宮寺」
「・・・あ、リューヤさん」


振り向くのは神宮寺恋
ST☆RISHのメンバー
個々で活躍することも多い奴らの中ではモデルの仕事をメインにこなしている

生まれ持った抜群のスタイルに、下品にならない色気
自分の見せ方を熟知していて・・・


「おまえ、なんかあったのか」
「ううん、だいじょうぶだよ」


こいつの「だいじょうぶ」は信用ならん

他人からの見られ方を知っているからこその外面の良さ
家族とはあまりいい関係でないが、それでも財閥の一人娘
そして3人兄弟の末っ子
末っ子気質全開のただの甘ったれだ


「仕事は?」
「いま終わったよ、何?デートのお誘い?」


張り付けた笑顔が痛々しいぞ
さっき仕事のない一ノ瀬とスタジオで会ったのもこいつになにかあったからじゃないか・・・?


「そうだな。どっか行くか。俺ももう終わりなんだ」
「わー、リューヤさんの奢りだぁ。リューヤさん今日車?」
「ああ、俺の車わかるよな。俺も挨拶したらすぐ行くからそこで待ってろ」
「はーい」


手短に挨拶をすませ、駐車場に向かう
神宮寺は俺の車に寄りかかるように立っている
立っているだけで絵になる、と思う

だが、その表情は暗い
手に持った携帯の画面を見つめてため息

なんなんだよ、なにがあったんだ


「待たせて悪かったな、行くぞ」
「あ、うん・・・」
「なんか予定でも入ったか?」
「ううん、だいじょぶ」


おい、暗い表隠せてねーぞ
こいつをこんな顔にさせるのは、たぶんあいつだけだろうな

でも、つい最近聖川から2人のことについて報告を受けたばかりなんだがな


「悪い。ちょっと電話」
「んー」


個室に入り食事をしていると、携帯が着信を告げる
ちょっと確認事項程度ですぐに部屋に戻ると、さっき駐車場で見たような表情の神宮寺


「なんか、あったのか」
「なんでも」
「ない、って顔に書いてあるぞ」
「う・・・」


図星、か


「別に攻めてるわけじゃねぇよ。なんかあるなら話してみろって思ってるだけ」
「・・・なんもないもん。なんも」
「あー、わかったわかった」


意地っ張り

こいつのこのめんどくさいのをしっかり受け止められるのはあいつだけだろ

事務所にはいつ入籍だとか、そんな話もきてる


「よし、じゃあこれ食ったら帰るか。聖川のとこでいいんだろ?」
「・・・っ」


聖川、の言葉に固まる表情
まぁ、だとは思ったが
最近は喧嘩もなく落ち着いてたらしいのに


「聖川と、なんかあったのか」
「・・・なんもない」


それしか言えないのか、おまえは
聖川、これはおまえにしかどうにもできねぇぞ

俺の仕事はこいつをヤツのとこに送り届けることか


「ほら、帰るぞ」
「だめ」
「は?」
「いま、ひどい顔してる。リューヤさんのせい」

「リューヤさんも見ちゃダメ」だなんて
またわけのわからないことを・・・
身近な人間以外に見られるのがやなんだろうが


「しょうがねぇ・・・これで俺もみえねぇから、早くどうにかしろ」


うじうじしてる神宮寺の顔を肩口に押しつける
普段堂々としてる身体が妙に小さく、頼りなさげに感じた


「・・・化粧、つくよ」
「かまわねぇよ」


俺のスーツなんていくらでも汚していいから
早くその顔、どうにかしろ

そして聖川
この意地っ張りで甘ったれなこいつをどうにかしてくれ



END

龍恋じゃないです
あくまでもりゅうやさんにとって恋は手の掛かる生徒

けい
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -