その総てが、幸せだった | ナノ




その総てが、幸せだった









恋が帰ってこない

仕事、は夕方までだと言っていた
もしかしたらその後誰かと食事をしているのかもしれない

恋の次の仕事関係者は俺も以前一緒に仕事をしたことがある
スタッフや役者の交流を大事にする人で食事会などがよく行われた

きっと、それだろう
1人で食事することを極端に嫌がる恋のことだから
友人と会っているのかもしれない

長期ロケから予定より早く帰宅したため
恋は俺がもう家にいることを知らないわけだから


「それにしても遅いな…」


少し心配になり
なんとなくエレベーターホールに向かった

ここで待っていても、仕方ない

すぐに折りかえそうとすると、
エレベーターの表示が上昇してくるのを目にし動きを止めた

エレベーターが止まる
扉が開く
そこから出てきたのはボロボロになった恋だった

瞬間

何か言いそうになった恋の肩に自分の着ていたジャケットをかけ
半ば引き摺るように抱えながら部屋に連れて帰った


「なにがあった」と問うが恋は口ごもる
何があったか知りたい
その様子は、誰かに力ずくで迫られたとしか思えない

もしそうならば恋は傷ついているはずだ
しかし、自分の衝動が抑えきれず 優しくしてやることもできない

恋から感じる煙草と酒の匂いに嫌気がさして風呂に入れと言い恋から距離を取る

その間に落ち着かねば
恋が言いたくないなら、言わなくてもいい
たとえ何をされていようと、恋を嫌いになるわけがないのだから

冷たいお茶を飲み、深く呼吸をし、自身を落ち着かせる


「う、わぁぁ…」


バスルームから小さく聞こえる恋の泣き叫ぶ声

バスルームということは恋は裸である
自分も服を着たままということを忘れて

バスルーム飛び込んだ


「恋!」
「ま、さと…」


濡れることなんて気にせず
恋の身体を抱きしめた


「すまなかった…」
「え…」
「ボロボロになっていたお前を見て、感情を抑えることができなかった」


誰かに何かをされたのだろうか
そいつは恋に何をしたのか
なぜそんなことになったのか
おれがもっと早く連絡をしていればよかったのか


「そんな…真斗のせいじゃ、ない…」
「いや、お前のことを一番理解しているはずなのに」
「だって、仕事、だし…あたしだって…もっと1人に慣れなきゃ…」


「真斗に離れられたら、1人になるしかないし…」とつぶやく
俺が恋を1人にするわけがない
長年の恋がやっと実って、ここまで来ることができたのに


「俺は、おまえの身に何があっても離れない」
「ま…」
「俺はおまえの全てが愛おしい。そんなおまえと共に在ることが幸せなんだ」


恋の水色の瞳を見つめそう伝えると、その水色が滲んだ
濡れた腕が俺の首に絡みつく
ひとしきり泣いたあと、恋は赤い顔をあげる


「え…と、ちゃんと、話すから、いったん出て…?」


その言葉で気づく
ここはバスルームで、恋は全裸であること

勢いよくバスルームから出て、脱衣所で濡れた自分の服を洗濯機に投げ込む
着替えを済ませ、ソファに座り恋を待つ


「お、またせ…」
「ああ」


バスローブを着た恋が横に座る、
風呂上がりの恋からは石鹸の良い匂いと、少しの熱気


「あの、ね。別に何もないから」
「何、も?」
「うん。信じられないくらい、不運が重なったって感じで…」


ぽつり、ぽつり、と事の真相を伝えられる
見事なくらいの、偶然


「事情はわかった。では、なぜおまえはあんなに泣いた?」
「それは…あんな格好見たら誰だって同じこと考えるでしょ…?
 あんた真面目だし、…いや真面目じゃなくても普通あんな恋人、嫌かな、って
 部屋に連れられてるときの迫力半端なかったし、避けられるんじゃないか…て」


確かに、勘違いされてもおかしくはないかもしれん。
しかし…


「言っただろう、俺はお前の全てを愛し、そんなお前の共に在ることが幸せなんだ、と」
「うん…それ聞いて安心した」


恋は俺の肩に頭を預け手を握り指を絡めてきた
それに答えるように俺も指を絡め、片方の手で恋の頭を撫ぜる


「あたしも、ね。あんたのこと好き、よ。で、今すごく幸せ」
「ああ」


こちらを見上げる顔を引き寄せ、唇にキスを落とした。

キスを交わした後、お互いに目を合わせ、恋を抱きあげる。
珍しく抵抗せずに首に腕を絡める恋と共に寝室へ向かった。

まだ温かい身体をそっとベッドに落とし、自らは恋に覆いかぶさる。

そして、再びキスをおとす。
今度は深いモノを。お互いの舌を絡め合い、徐々に激しくなっていく。

唇の次は、首筋へ。
恋の長い髪なら見えないであろう項に所有印をひとつ。ふたつ。

そのたびに小さく声をあげる口を再び塞ぐ。


「あたしもっ…」
「ああ、好きなところにつけていいぞ」


感じているのだろう。
涙目になった恋が俺の首筋に唇を寄せる。
小さな痛みに、更に気持ちも昂る。

首筋、鎖骨、そして、やわらかな膨らみに到達する。
その頂をかるく撫ぜると恋の背中が跳ねる。


「いつもより、感じているのではないか」
「お…酒、飲んだから。少し、だけど」
「そうか」
「んっ…あ…」


右の膨らみを撫ぜたり、少し力を入れながら
左の膨らみに口づけを落とす。こちらにも所有印をひとつ。

ツン、とたった頂を刺激すると、また恋の身体が跳ねる。

だいぶ感じている。
自分の手にこんなにも感じている恋を愛おしく思い再び唇にキスをおとす。


「あっ…もうっ…」
「どうした…?」
「ううっ…」
「言ってくれなくはわからないだろう」


意地悪い、と自分でも思うが。
普段素直でない恋のこんな姿も愛おしい。


「は、やく。真斗と…」


膨らみを刺激していた手を、更に下に伸ばし、
既に潤っている割れ目に指でそっと刺激した。


「やぁっ…あ!」
「はやく、どうしたいのだ」


更に指を進め、少しずつ奥に侵入していく。
その少し上にある部分もそろりと撫ぜ、刺激を増やしていく。


「んあああ!ま、と…はや、く…」


そろそろ、限界だろうか。
酒の影響もあるのか、解れていくのも通常より早く感じる。


「も、無理っ…、早く、真斗、の、入れてっ…」


歓楽におぼれながら、笑みを浮かべる恋に自分も限界を感じ。
充分に濡れたそこに自らを押し進めた。


「んぁあああ!!はっ…あ…」
「くっ…恋、そんなに…」


快楽に恋の身体が大きく跳ねる。
自身に与えられる快楽に自分自身も限界が近づいてくるの感じる。

恋の足が腰に絡みつく。


「あ、っは…真斗…」
「恋っ…」


ひたすらに、
熱に浮かされながらお互いの名前を呼ぶ。

どちらかともなく口づけをかわし、お互いの身体に腕を回す。


「ま、…とっ…!もう…!」
「わか、った…」
「あ、ああっ!」


一段と強く腰を進めると、それまでにないくらい強く締め付けられる。

今日は避妊具をつけていない。
既に挿入している時点で避妊できているとは言えないが、中に出すわけにはいかない。

名残惜しく感じながら腰を引こうとすると恋の足でそれを阻止された。


「お、おい…!恋っ・・・!」
「だ、いじょう、ぶ、だからっ…!」


せりあがる射精感に、耐えることができず、恋の中へ欲を吐き出してしまった。
意味がない、とわかりつつも、早急に自身を引き抜く。
恋の足の間からは己の欲が流れ出て行く光景が艶めかしい。


「恋…おまえ…」
「…だって。しあわせ、って。あたしが…いれ、ば…」
「そうは言ったが…」


お互いの家に話はしている。
しかし、職業柄、公にはしていない。


「いや、なの…」
「嫌ではない、いずれお前との子は欲しいと思っている」
「なら、いいじゃない…」


快楽の余韻に浸っているのか、気だるげな恋の頭に腕を回す
腕枕の状態で、恋は俺によりそってくる


「あたしは、アイドルなんて、なりたくて、なったんじゃない」
「それは…」
「だから、あんたがいればいい…」
「恋…」


これは、快楽に身を蝕まれた戯言かもしれない
だが、今は素直に受け止め、伝えよう


「俺も、お前がいればいい。お前と共に生き、その課程で必要あらばどんな仕事でもしよう」


お前と共にあることが、幸せなのだから。



END


[さみしがり屋に贈る五題]
配布元:Kiss To Cry

自分でも1日で5つ書くとは思わなかった。
そして初めての裏。拙い。


20120711


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