つめたい手とあったかな心 | ナノ




つめたい手とあったかな心





イッチーは、まるでお母さん
若しくは、頼れるお姉さん


「イッチーー!」


楽屋に入って、イッチーに抱きつく


「大声で人の名前を呼ばないでください!」
「イッチーだって声大きいよ?」
「そういう問題ではありません」


ちょっっと、口うるさいけどね、

それでも
「で、どうしたんですか」と聞いてくれる


「真斗と喧嘩した」
「…はぁ、またですか」
「今回はいつもと違う!」
「それ、何回目ですか」


うう…
図星だから、何も言い返せないけど

イッチーの言うとおり真斗の喧嘩なんていつものこと
くだらないことばっか
それこそ、目玉焼きには何かける?みたいな

今回だって、
お互い仕事も終わって、家に帰れば特に気にしないだろう

ただ、
たまには人に甘えたくなるわけで


「今日はイッチーと一緒にいたい気分なの」
「そうですか…」


ソファに座ってるイッチーの肩に寄りかかる
うん、良い匂い

真斗と違う、安心感

腕を絡めてイッチーの冷たい手を握る


「あ、メール」
「聖川さんですか」
「うん」


夕飯のリクエストを尋ねるメール
よくある喧嘩終結のパターン


「きょう、は、イッチーと」
「ちょっと恋!」
「え?」
「聖川さんと仲直りをしなさい」
「いや」


ていうか、そんな大事じゃないし
イッチーと、って言って真斗の機嫌が悪くなるなんてありえない

これが兄さんと、なんて言ってしまったら
いろいろ心配とかかけてしまうんだろうけど


「イッチー、今日、この仕事だけなんでしょ?」
「そうですが…」
「じゃあ決まりっ。あたしね、イッチーのカレー食べたい」


ねー、と顔を覗き込むと、ため息をついて
「仕方ないですね」と小さく笑った

きれい、イッチーはきれい

改めて聖川にメールを打つと「了解した」とのこと

でもあたしだっていつまでも終止符を打ちたくないわけではないから
帰る予定の時間を返信した


「帰りに、買い物をしますからね」
「りょうかいっ」


メールを打ち終わって空いたを再びイッチーに絡めた所で
ノック音が響き、スタッフさんから準備が整ったとの連絡


「ほら、行きますよ」
「わっ…と、…うん」


先にイッチーが立ち上がり、軽く頭を叩かれる


イッチーの冷たい手、でもすごくあったかかった。


END


[さみしがり屋に贈る五題]
配布元:Kiss To Cry


20120711

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