おでこ、こつん | ナノ




おでこ、こつん




やめて、
ひとりにしないで…

ダディも
兄さんも

私から離れていく、

そして


「…かあさんっ」


夢…
たまに見る、同じ夢

両親はもういない、けど
兄さんとは少しずつ歩み寄っている

ひとり、なんかじゃない


「わかってるのに…」


視線を横に向ければ整った顔

そうよ、
いまはこうして真斗だっているのに

寝てる時まで真面目な性格が出ているようで
口が開いていたりしないし
穏やかな規則正しい寝息

起こさなくて良かった
でも、起きて、欲しい

悪い夢に取りこまれないように

綺麗にととのえられた前髪は、
重力に逆らうことなく、下に流れている

すこしだけ、いつも見えない額の部分がみえる

この
弱い、脆い、暗い
私のネガティブな思考を

あんたにうつせば楽になる?

あたしの気持ちを読み取って、
不安にならないように、
抱きしめてくれる?

こんなこと、絶対、口に出してなんて言えない

このままうつっちゃえばいいのに。

真斗の少しだけ露わになった額に、自分の額をおしつけた


「んっ…」


起こした、かな
色々鍛えられてるせいか、警戒心は強い

起きちゃえばいいのに

どうせ、あたしはこのままじゃしばらく眠れない

せっかく2時までに寝られるように、ベッドに入ったのに


「…れん?」
「あ…」


うっすら開く、真斗の瞳
深い青に吸い込まれそうになる

刹那、
真斗に抱きしめられた


「え…」


ホントに寝起き?
ってぐらい、強い力

でも、
あったかい
安心する


「おまえが、泣いている夢を見た」
「え…」
「起きたら泣きそうな顔をしていて、びっくりした」


ピアノを奏でる指は綺麗で細いけど、
でも、大きな手、あたしを安心させてくれる手


「いやな、夢、見た」
「夢?」
「…うん」


真斗の肩口にうめていた顔をそっと離される
いまは、離れたくない

抵抗するように自分の腕を絡めると
また、頭を撫ぜられた


「どんな夢かはしらないが」


耳元に響く心地よい低音


「お前の不安、恐怖、全て俺が受け止めてやる」


だから安心して寝ろ、と
ずれていた布団をなおされて、
真斗の胸の中にひきこまれた


「もう、眠れるか?」
「…ん」


落ち着かせるように、リズムを刻む掌


もう、だいじょうぶ


END

[さみしがり屋に贈る五題]
配布元:Kiss To Cry


20120711


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