あなたいろにそまるのは | ナノ
あなたいろにそまるのは
翔に教わったことを確認
まずは爪の表面を整える
ベースコートを塗る
カラーを塗る(発色によっては２度塗り)
トップコートを塗る
うーん
なかなかめんどくさい。
あの子はこんなことを頻繁にやっているのか
あたしはあんまり興味ないから
仕事に合わせてネイリストさんにお任せしていた
いまは何もしていない
急に明日オフになったから
ちょっとぐらい歪になってもいいから自分でやってみようかなー
なんて思って、翔に教えてもらった
ついでに彼女から何色か借りてきた
これ、お前のイメージカラーじゃん、っていうオレンジとか
赤やピンク、彼女の好みなのかはっきりした色が多い
「…よし」
簡単に磨いた爪は思ったよりもツヤツヤと光沢がでている。
これだけでこんな変るんだなぁ、とちょっと感心
やっぱりオレンジかな
失敗したり、イメージが違えば落とせばいいわけだし
「…げ」
ベースコートはほとんど色がないせいか全く気付かなかったけど
実際に色の濃いものを塗っているとムラができてしまいみすぼらしいものに
とりあえず、左手は全部塗ってみたけど、これは…よくない
「あー、もうめんどくさ」
「ただいま」
「あ、おかえりー」
「む…なんだこの匂いは…」
同居人もとい恋人のご帰宅。
たぶん、リムーバー特有の匂いに反応した。
「何をしてるんだ？」
「これー」
色がついてるところついてない箇所のあるちぐはぐな左手を見せる
「ああ、来栖がよくやっている」
「そ、やってみようかな。と、思って」
「…できていないではないか」
「う…」
どうせ不器用だよ
料理もできないし、裁縫もできないし
「どれ、貸してみろ」
「え、あんたできるの？」
「利き手でそれでは右手はどうするつもりだ。
まだどちらも利き手でできる俺の方がマシだろう」
おまえより手先は器用だしな、と付け加えられてムッとする。
そんなこともお構いなしに真斗はあたしの左手をつかみ視線をそれに落とす。
まつ毛、なが…
あたしは必死でマスカラ、ビューラーを駆使しているというのに
ぶれないようしっかりと握られた自分の手
自分の指先に集中されていることに気恥ずかしくなってくる。
無意識に乾かそうとしているのか、時折息が吹きかけられ、震えそうになる。
「これで、いいのか」
「あ…うん。きれい…」
「では右手も出せ」
大人しく右手を差し出す。
左手と同様、綺麗に塗られていく自分の爪。
「あ、あと、これ」
「わかった」
トップコートも塗られ、全ての爪がオレンジに染まる。
あたしが使ったリムーバーのゴミやマニキュアを真斗は持って立ち上がる。
「それ、おチビちゃんのだから」
「そうか。ではおまえの鏡台に置いておくぞ」
あ、いいこと思いついた。
これくらいならあたしでもできるでしょ。
「ね。その紺色のとって」
「これか？でも、もう全部塗って…」
「いーから！」
まだ半乾きのネイルが崩れないよう気をつけながら
翔から貰ったものを手に取る。
「ふふっ。完成ーー」
じゃん、と近づいてきた真斗に左手を見せつける
「あたしたち色。ほら、あたしのカラーってオレンジじゃん？で、あんたはブルーだから」
翔にもらったのはフレンチネイルが簡単にできるガイドテープ
左の薬指だけ爪の先をブルーに染めた。
「ふっ…、くだらないな」
「いいのよ。さすがにここに指輪するわけにはいかないでしょ。
まぁ、これも意味深かもしれないけど。明日のオフだけだし」
くだらない、とかいいつつ顔は笑ってるわよ、バカ真斗。
我ながらなかなかいいこと思いついたなー、と改めて左手を見る。
あ、うーん。でも。
「むー…」
「なんだ？」
「これ、やっぱなんか変。ねぇ、これ落として」
他の指にリムーバーつけたくないから真斗がやって、と左手つきだす。
不服そうな顔をしながら、言うとおりに消してもらった。
「オレンジで、いいんだろう？」
「ううん。いらなーい」
手元にある、さっき爪の先だけを染めた色。
「できた！」
これでホントに完成！
再び、真斗の前に左手をつきだす。
今度は、爪全部をブルーに塗った。
「これで、あたしのここはあんたのものよ！」
真斗はちょっときょとんとしたあと、小さく笑った。
他の爪と比べるとかなり浮いてるけど。
ちょっといい気分。
真斗からの印をもらった気分。
ここは真斗だけのもの。
「ああ、いつか必ずこの指に指輪を贈ろう」
左手を掴まれ、薬指の付け根に真斗からの口づけをうけた。
仕事では落とされちゃうけど、明日くらいはこのまま真斗の印を残しておこう。
END
勢いだけで書いたマサ恋。
ベースオレンジに青のフレンチしたらすっごく変でした！
20120706