ちいさくひかるスカイブルー | ナノ




ちいさくひかるスカイブルー




早乙女学園を卒業して5年。
マスターコースも終え、俺達メンバーは各々の場所で暮らしている。
学生時代から所謂恋人としての付き合いを始めた、自分と神宮寺恋は
世間には関係を発表していないため、別の場所に住居を構えつつも、俺の部屋に同棲も同然の状態で暮らしている。

仕事の時間帯は不規則だが、俺自身はなるべく規則正しい生活を送るため
仕事が休みであったり、夕方や夜からの場合でも決まった時間に起床する。

恋は朝が弱い。
どんなに早く寝ようとも朝は俺よりも遅く起きる…いや、起こす。

そのため余程恋の仕事が早くない限り静かな朝を迎えることができるのだが。


「・…ぃ」


意識の向こうでかすかに聞こえる声。
そして、部屋を歩き回る足音。

寮生活と違い、自分の部屋に入れるのは、
招き入れない限り、自分と恋以外にあり得ない。


「…何を騒いでいる」
「あ…おきたの…」
「これだけ騒がれればな」


こちらを向いた途端、何かをごまかすようにすぐに視線を逸らされる。
起きたままのナイトウェアのまま、寝癖のついた髪は前髪だけがシュシュでまとめられ
ている。

ベッドサイドに置いてある時計を確認すれば6時を過ぎたところ。
こんな時間に恋が起きていること自体がほぼ皆無に等しい。


「急な仕事でも入ったのか」
「…え、あ、まぁ。そんなとこ」
「何時に出るんだ。まだ時間があるなら朝食を用意する」


どちらにせよ、自分も起きる時間だ。
ただ急な仕事ならば時間に余裕がない可能性もある。


「えっと…うん。8時に出る」
「そうか。では用意しよう。お前は自分の支度をしろ」


何かを隠している。

だが、何を隠しているかまではわからない。
恋はシャワーを浴びにいっている。

あの格好をしているということは、起きてすぐ、もしくは寝る直前に
何に気づいたのだろう。時間を考えると起きてすぐ、と考えられる。

朝食をテーブルに並べながら思考を巡らす。
何かいつもと違う所はあっただろうか。

その間に、恋が戻ってきて2人で朝食を食べ始める。
食べている間も恋の様子は落ち着かない。


「一体、何があったんだ」
「…、なんでもない」
「そうは見えないが」
「あんたには関係ないっ」
「…そうか」


バツの悪そうな顔をしつつも、どうやら打ち明けてはくれないようだ。
頑固なのはいつものこと。
殊更、俺に対してはそれが顕著である。


「今日、仕事は?」
「昼過ぎからドラマの撮影だな。恐らく遅くなるだろうから先に寝ていて構わない」
「そう」


何に対してかもわからないが、
何かを気にしている恋をこのままにはしたくない。
しかし仕事では仕方ない。


「じゃあ、あたし行くから」
「うむ。いってらっしゃい」


日課になりつつある軽い口づけを交わし恋を見送る。
顔を近づけた瞬間に一瞬恋の身体が強張ったが、拒否はされなかった。

明日になってもこの様子であれば、ある程度強制的にでもはかせてやる。
そう自分に言い聞かせ、恋を見送った。




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「聖川ー!」


予想通り遅くなってしまった。
すぐに帰宅しても恋は寝てしまっているだろう。

休憩中に確認した携帯には「帰宅した」というメールが入っていた。


「翔か。お前もこのスタジオだったのか」
「おう。バラエティの収録でな。今帰り?」
「ああ。お前もか?」
「ん。そうだ、軽く夕飯食べない?夕飯って時間でもないけど。軽いものでも」


そうだな。と返事をしようとした所で、マナーモードにしていおいた携帯が震える。
発信者は「神宮寺恋」
来栖に一言告げ、携帯を確認する。


「恋か?」
「ああ。いつ帰ってくるか、と」


恋には来栖を軽く食事をして帰る、ということを連絡し携帯を閉じた。

行きは四ノ宮の車で来た、という来栖を自分の車に乗せ、
深夜でも営業している行きつけの店に向かう。

仕事の話をしつつ食事をし、来栖のマンションへ向かう。
車をマンションの前に止めると、来栖が鞄から何かを取りだす。


「そういえば…この前恋が家に来たんだけど」
「ああ、そんなこと言っていたな」
「その時に、これ忘れってったんだ。渡しておいてくれ」
「ったくあいつは…」


来栖から受け取ったのは恋のピアス。
小さなそれをなくさないようにハンカチに包んで丁寧にしまう。


「それ、すげぇ気に入ってるみたいだから」
「そう、か」


来栖が言うには
普段好んでつけている大ぶりのものではなかったので来栖がそれに気づくと
半ば自慢気味にそれを見せられたという。

その言葉に僅かに口角が上がってしまうのを感じる。
来栖に別れを告げ自宅へ車を走らせた。




時間も時間だ、小さく「ただいま」と告げながらドアを開く。
その瞬間にガタンという大きな音。

まだ起きているのか
そして、何をしている


「どうした」
「あ…おかえり」
「ただいま」


大きな音の原因は恋のサックスケースが倒れた音だったようだ
朝と同じようにナイトウェアに前髪をシュシュでまとめた格好

いったい朝から何をやってるんだ・・・


「恋」
「なに!」
「朝から落ち着きない。何をしているんだ」
「なんでも、ないって」
「何でもないわけないだろう」


小さく息をつき、居づらそうにソファにしている恋の隣に座る。
恋は目を合わせようとしない。
その行為に少しムッとして無理やりこちらを向かせる。


「おまえが何かに困っているなら解決の力になりたいと思う」
「う・・・」
「俺に言えないことなのか?」
「だって…言ったら怒る」
「俺が怒るようなことをしたのか」


俺から離れようとする恋に近づき、目線を合わせる。
恋が、痛いと訴えるまで恋の腕を強くつかんでいたことにも気付かなかった。


「…わかった、言うわよ」
「最初からそうすればいいんだ」
「…なくしたのよ」
「何を?」


やっと答えてくれる気になったのか。
近づけていた顔を少し離し、聴く体勢をとる。

何かをなくした、ということから大方俺に片付けができてないだの
普段から整理整頓を心掛けろと言われると思ったのだろう。


「…ピアス」
「ああ…。小さいからな。どんなものをなくしたのだ」
「…真斗がくれたやつ」


そう答えた瞬間、恋はキュッと目を閉じる。
目の端にはうっすら涙が見える。

おそらくピアスがないことに今朝気づき必死で探してたのだろう。
仕事が終わってから、俺が帰宅する間も。

今まで恋にピアスを送ったことは1度しかない。
まさにそのピアスは来栖から受け取ったものである。
いくら恋が部屋を探しても見つかるわけがないのだ。


「恋…」
「ごめんなさいっ…ちゃんと見つけるから…」


2人で出かけた際に小さな雑貨屋で購入したもの。
お世辞にも高価と言えるものでもなかったが、
宝石でもないその小さな石の色が恋の瞳の色に酷似していたのだ。


「恋、こっちを向け」


恐る恐る顔をあげた恋の耳にそっと触れる。


「大切に思ってくれていたんだな」
「そりゃっ…あんたあんまりプレゼントくれないし」
「そう、だな」


確かにおれはあまりものを送ったことがない。
誕生日も食事や、2人の時間を過ごすために小旅行することが多い。

手元に置いていた鞄から先ほどのハンカチを取り出す。
そこにはブルーの小さな石のついたピアス。

それを手に取り、キャッチを外し、そっと恋のピアスホールに通す。
その感覚に恋は反応し、目を大きく見開く。

方耳をつけ、そっと口づけをしてから、もう一方の耳にピアスをつける。


「もう、なくすでないぞ」
「・・・うん」


目尻の涙をそっと指先で拭い。恋の身体を引き寄せる。

普段は何にも執着しないような彼女がこんな小さなモノに
必死になってくれたこと。

俺には一言礼を告げただけだったが、それを友人に嬉しそうに話していたこと。

それが彼女の可愛いとこなんだろうけど。


「さて、お前はもう寝ろ。俺は風呂に入ってくる」


名残惜しいが、夜も遅い。
明日も仕事もあるし、恋のためにも早く休んだ方がいいだろう。
仕事以外にも、部屋をひっくりかえすほど動いたのだから。

身体をそっと離し、ソファから立ち上がろうとすると、服を恋につかまれる。


「なんだ」
「その…一緒に…」
「?」
「一緒に、お風呂、入ってやってもいいわよ…」


彼女なりの詫びなのだろう。
顔を赤くする彼女に思わず笑ってしまう。


「嫌ならいいわよ…もう寝るからっ」
「いいや、一緒に入ろう」


先ほど付けたばかりだが、ピアスをつけたままの入浴は衛生上あまりよくない。
それを恋も気づいたらしく、ピアスを外し、キョロキョロ辺りを見渡す。


「一時的に、俺の机の上においておけ。お前の鏡台は…明日にでも片付けろ」


恋の鏡台はピアス騒動でめちゃくちゃになっている。
このままではまた行方不明になってしまうだろう。

ピアスを置いた恋と共にバスルームへ向う。





ピアスをなくしたことに後ろめたさを感じているのか、
やけにしおらしい恋に理性が危うく崩れそうになってしまったのはまた別の話。




END


自分の好みのものでもなくても好きな人からもらったらうれしいし、
それをなくしたら慌てるよね、っていう話。
ぐだぐだ長くなってしまった。終わり方がわからない。
とりあえず数をこなそうかと。とりあえず2人は一緒に暮らしてる設定。
お互いの家には認められてる。


20120704




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