卒業
今はもうしん、となった私がいた教室
卒業式後、最後の最後まで泣いて、抱き締めあって…
全てが終わった感じ
部活の後輩には卒業プレゼントをもらい、アルバムには寄せ書きをして
「まだいたのか?」
「!」
後ろを振り向くといたのはドアにもたれた担任だ
「銀八先生…」
「もう誰もいないと思ったよ」
「最後ですから。この教室に入るの…」
だから惜しんでいるんです、と笑うと「そうかい」と言って先生も教室に入ってくる
「たくさんあったもんな」
「3Zは魅力的すぎて忘れることなんてありませんけどね」
「だな」
先生と二人で笑い合う
「先生、」
「ん?」
「やっぱり正装、似合いませんね」
くすっと笑うと小さく小突かれた
「…嘘です。かっこいいです、よ」
素直に褒めて、チラッと先生をみると初めて見た顔
「先生、照れて…」
「ないっ!見んな」
教師の顔じゃ無い
別の顔で、それを見れる自分が嬉しくなった
「妙、お前卒業したんだよな」
「留年してほしかったですか?」
冗談混じりで言うと先生は真顔で「うーん…」と考えていた
「それも思ったけど…卒業してもらった方が嬉しいよ」
「…教師として、ですか?」
「男として、決まってんだろ」
うつむいた私の顔をくいっと上に上げられる
「もう、我慢しなくていいからな」
「…はい」
とたんに顔が綻んだ
そして、その後は唇を重ねあった
たくさんの思い出のあるこの教室で
人目を気にせず二人でいられて
キスできるなんて
「妙、卒業おめでとう」
嬉しくて、涙が出た
卒業
じゃ、これ合鍵な。卒業祝い
…ありがとうございます。…早速私、先生の家に行きますよ?
じゃあ晩飯でも作っ―…食べに行こうな!
いえ、作りますね(ニコッ
…はい。
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