続きは年越しに
「ミツバ殿〜」
「あ、近藤さん。おはようございます」
真選組屯所の冷たい縁側を歩いていると前から近藤さんが手を振って歩いてきた
「おはよう。今日は体の調子…大丈夫?」
「はい、大丈夫ですよ。ここに住ませてくれたお陰で毎日楽しんで過ごせてるわ」
ありがとう、と近藤さんに頭を下げる
「いやいやこっちこそありがとうだよ」
「え?」
「ミツバ殿がいればうちの扱いづらい2人がいとも簡単に扱えるからなア」
「?そうですか?」
扱いづらい2人がよく分からないが相づちを打っておく
ところで、
「十四郎さんとそーちゃんは…?」
「ああ、総悟はきっと公園じゃないかな。トシはまだ寝てるんだろう…」
なんせ昨日まで仕事が残ってたからなァ
そう言って笑う近藤さん
「トシの部屋はあっちのつき当たり。流石にそろそろ起きてもらわんとな。ついでに今夜は年越しパーティーって伝えといてくれる?」
「!はい」
私が十四郎さんに会えるための口実を作ってくれたのだろう
私はくるりと逆方向を向き十四郎さんの部屋に小走りする
十四郎さんはなかなか自分の部屋を教えてくれなかったし私も追求しなかった
部屋に私を入れたくないのだろう
けれど今回は仕方ない
近藤さんに言伝てを頼まれたのだから
起こさないようにと部屋の戸を開ける
一番始めに目にしたのは布団の中にいる十四郎さん
そして、もぞもぞと布団の中に入る十四郎さん
あ、寒いのかと開きっぱなしにしていた急いで戸を閉める
「十四郎さん…」
「…バ」
…寝言?
いやいや取り合えず起こさないと
「十四郎さん起きて」
「ん…み、つば…」
寝ぼけてる…?
なんかかわいい、と思っていると十四郎さんの意識がはっきりしてきたのかカッと目を開き上半身を起こす
「なっ!?なんでミツバがいんだよ!?」
「あ、えと…近藤さんに頼まれて…」
「あー…」
「あと言伝て!今夜年越しパーティーするらしいですよ」
あわてて言葉を繋ぐ
十四郎さんは分かった、と相づちを打つ
そして話題がなくしん、とした空気がはりつめる
「…なんで部屋知ってんの?」
先に口を開いたのは十四郎さん
「近藤さんに教えてもらったんです」
十四郎さんはそうか、と言うと黙った
やっぱり私を部屋に入れたくなかったんだ、なんとなく分かった
「ごめんなさい」
「え?」
「ごめんなさい…私を部屋に入れたくなかったから教えなかったのよね。近藤さんから聞いてしまってごめんなさい」
泣くもんか
拒絶されてたのを目の当たりにしたって泣くなんてことはしない
頑張って笑顔を取り繕う
「いや別に謝んなよ」
そう言うと十四郎さんは私の頭を撫でる
「…別にお前を部屋に入れたくない訳じゃない」
「え」
「…と思うから」
「え?何て言ったの?」
聞き取れなくて聞き返すと十四郎さんは顔を赤らめる
「だからー…歯止めきかなくなると思ったから!」
「…!」
「ついでに言えば今も…」
「…えっ!?」
「バカだろお前。ただでさえ2人きりで、布団も敷いてあって好きな奴がいて邪魔者はいない」
絶好の状況じゃねーか、と言われ私も顔を赤くする
「…襲うよ?」
「いやいや、ちょっ…」
顔が近くて目線を反らす
十四郎さんはふっと笑うと
「じゃ、続きは年越しパーティーの時にでも」
「し、しませんから!!」
続きは年越しに
…そういえば十四郎さん
なんだよ
さっき好きな奴って
あ?んなこと言ったか
…顔、赤いですよ
うるせーよ
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