休日の過ごし方
「新八、準備は良いアルか?」
「…うん。ちょっと…いや、大分ムカつくけど協力するよ」
「よし!決行アル!」
***
「は?映画のチケット…?」
神楽がこれ見よがしに見せつけてくるチケットに銀時は「?」を浮かべて神楽を見る。
神楽はにまっと笑って銀時を見る。
「新八に貰ったアル」
「へー、良かったな。デートでもすんの?…つか、何で4枚もあんの」
そう、神楽の手にあるチケットは4枚。
2枚の使い道は分かるが残りの2枚は何なんだ。
銀時は首を傾げながら神楽に問う。
すると神楽は2枚のチケットを銀時の手に渡した。
ますます訳がわからない、銀時はその2枚のチケットを眺めて「何なの」と溢した。
「それ、姉御も行きたいって言ってたアル。けど私は新八と行くし…」
「…だから?」
「だから、姉御と行くヨロシ!」
「言うと思った。思ったさ!」
神楽の答えに間髪入れずに銀時は怒鳴ったように答える。
「冗談じゃねえ。誰があんな雌ゴリラ…」
予想できた銀時の答えに神楽は溜め息を吐く。
「…銀ちゃんが行かないならゴリラにでも渡してあげるかするアル。あ、私今から定春の散歩行ってくるネ」
そう言って神楽は定春の背中に乗り万事屋を出た。
残された銀時はいつもの定位置の椅子に座り、手に持っているチケットを見上げる。
「…や、ゴリラに渡したところでこれが使われることはないだろうし…そんなん勿体無いし…」
うだうだ言いながら「誰に対する言い訳だ」なんて一人でツッコミを入れる。
そしてわざとらしい溜め息を吐いて頭を掻く。
「…勿体無くするのは嫌だから。それだけだからな」
そんなことを小さな声で呟いて銀時は万事屋を出た。
万事屋を出て数分…
似通っているのかお妙に出会うのはそう遅くなかった。
「よ、よう…」
「どうも…って何か汗かいてません?」
「え!?いや、ね…今日は暑いな」
「まだ冬ですよ…?」
どもったり会話がおかしい銀時にお妙は首をかしげる。
その様子が何かあったことを知らせるのにはそう時間はかからなかった。
お妙は「どうかしたんですか」と銀時に声を掛ける。
銀時はなかなか言い出さず、代わりにお妙の目の前に神楽から受け取ったチケットを差し出した。
その様子に驚いたお妙だったがチケットを見て顔を綻ばせた。
「これ…」
「お前、見たいって聞いたから…」
「!いいんですか…?」
「…おう」
そう返事すると銀時はお妙にチケットを2枚手渡す。
神楽がチケットをくれた理由は二人で見に行かせるため…だろうが、銀時にそれをすることはできなかった。
彼女が銀時を好きがどうかの確証なんて持っていない。だから銀時は2枚のチケットを渡したのだ。
「好きな奴とか、友達とでも行ってこいや」
その言葉を最後に銀時はお妙に背を向ける。
これでいい、とはハッキリ言えないが今の自分にはこれが精一杯だと銀時は自己完結する。
「銀さんっ」
その声と同時に腕を引っ張られる。
「え、」と間抜けな声で返事をし、お妙を見ると彼女の顔が朱に染まっていることが分かった。
「今から!…この映画、見に行きませんか?」
予想外だった一言に銀時はただ「…行く」とだけ答えた。
唐突の予定にお互い驚きつつも隣を一緒に歩いて映画館へ足を向ける。
肩は近いようで近くない距離、お互いの目線は泳いでいる…そんな初々しいカップルのような二人───…
を背後から静かに尾行しているのは定春に乗った神楽と新八だ。
「どうやら上手いこといったアルな」
「…なんかやっぱムカつく…」
「いい加減姉離れするヨロシ」
神楽は定春から降り、じと目で新八を見る。
「姉上…」
「あーもう!お前は私じゃ満足しないア、ルか…今のなし!」
つい出てしまった言葉に神楽は焦り、赤くなった顔を隠す。
その言葉の神楽の仕草に新八は目を瞬きさせ、理解したと同時にみるみる顔を赤く変化させていく。
「あっ…や、うん。神楽ちゃんが居れば…満足、です」
「そ、そうアルか。それは良かったアル…」
その言葉を最後に無言になり、互いに立ち止まったまま、顔を背ける。
まるでさっきの銀時とお妙の二の舞だ。
無言に耐えられなかったのは新八の方で、神楽の腕を引く。
それに驚き、「え、何!?」と新八を見上げる神楽。
「姉上たち、映画見に行ってるし…僕らも行こうよ。で、お店とか回って…デート、しよう?」
新八の照れも入り交じった笑顔に神楽も照れながら顔を綻ばせた。
「ポップコーン!食べたいアル!」
「うん!」
そんな甘い空気に包まれた二人に定春は溜め息を吐き空を見上げた。
「わんっ」
休日の過ごし方
甘酸っぱい休日を…
・新神が一生懸命銀→←妙をくっつけようとして自分達がラブラブしてるオノロケ話
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