女王様はご機嫌ナナメ
「ジミーの馬鹿ヤロー!!」
神楽は山崎の鳩尾を殴ると真選組屯所を出ていった
「…何やってんだ山崎」
「何でも、ない…です副長」
「かーぐらちゃん?いつまでムスッとしてんですか〜?」
「うっさいアル。くるくるパー」
「くるくるパーって何だああ!!頭のこと言ってんのか!?」
銀ちゃんが隣で喚くなか、私はジミーのことを考えていた
今日はデートしよう、って約束したのに…
誘ってきたのはジミーなのに…
いきなりドタキャンって…
「どういうことアルか!?」
近くにいた銀ちゃんを殴る
「ぐほあぁ!?なんで俺エェ!?」
さっきまでうるさかった銀ちゃんがついに黙った
(正式には床に倒れ込んだ)
「…ジミーのばか…」
もういいアル
せっかくおめかししたのに…
なんだか私だけ期待してバカみたいだ
恥ずかしい
今日はふて寝してやる!!
そうして私は押し入れに潜り込んだ
「神楽〜起きろ」
ガラリと空いた隙間から光が差して目を細める
「…ん、今何時アルか?」
「6時」
この6時は夜の6時だろう
随分と長く寝てしまった
ムクリと起きてソファーに座る
「今日はご飯作ってやったから機嫌直せ」
「…ありがと銀ちゃん」
机に並べられたご飯は銀ちゃんが作ったせいかいつもより豪華に見えた
そして何より美味しい
だからと言って機嫌が直った訳じゃないけれど
銀ちゃんに怒っていた訳じゃないから…
ご飯を食べ終わりテレビを見ているとインターフォンの音がした
今日は新八がいないので二人で争う、筈だった
けれども銀ちゃんがすぐに立ち、玄関へ向かった
「?」
頭にハテナを浮かべながらテレビを見る
しばらくして銀ちゃんに呼ばれる
「お前のお客さん。あ、外出てもいいけど、帰りにしっかり神楽を送れよ?ここんとこ変質者多いから」
すれ違い様に私のお客さんにそう言うと聞きなれた声が返事をする
「分かってます。ありがとうございます、旦那」
声の方に目をやるといたのは私の愛しい人
「じみー…なんで…」
「約束、守んなきゃ駄目でしょ?」
だから、今から少しだけ外に出ない?
そう言ったジミーの肩は少しだけ上下している
任務が終わって急いでここに来てくれたのだろう
「ジミー…」
「ほら、行こう」
ジミーに手を引かれ、万事屋を出る
夜の道はいつもと違う
星が点々としていて綺麗だ
「…ジミー…」
「ん?」
「ごめんアル」
鳩尾殴って…、と付け足すとジミーはああ、と笑う
「なっ何がおかしいアルか!?」
「まさか謝ってくれると思わなかったよ。…でも」
「で、でもお前が悪いアルよ!?ドタキャンなんかするから…」
「うん、だからごめんね。」
「…なんでそんな素直に謝るアルか…ジミーは悪くないアルよ。仕方ないことアル」
「矛盾してるよ?」
「うっうるさいアル!!」
なんだかさっきから私ばかりが赤くなっているし…負けてる気がする
悔しいアル…!
「…そんな顔しないでよ」
「ふえ!?」
ふいに頬をつねられる
「感情丸出し。負けず嫌いめ」
「!」
どうやらバレてたらしい
むむっ…手強いやつアル
じぃ…と睨み返す
「それ、反則だって」
「?」
「だから…もう万事屋に帰したくないな。」
「!?何でアルか!?」
「このまま拐われてみない?」
「け、警察の癖に!!と言うかジミーの癖に!!何アルかその態度はあ!!」
「そんな赤面で言われてもなあ…」
「赤くなんかな、んっ―」
「…あーやっぱ万事屋に帰さなきゃ。僕がいろいろ危ないや」
帰ろう、と手を引かれるが振り払う
「ジミー…そっちじゃないデショ?」
「え?」
「私を拐うんダロ?男に二言は許されないアル」
「…知らないよ?」
「別に…いいアルよ」
女王様はご機嫌ナナメ
機嫌を直せるのはあなただけ
オマケ
神楽が外出中の出来事…
玄関を鍵かけ、電話をする
「あーもしもし近藤〜?それとも沖田くん?」
『…近藤さんは仕事中。総悟は寝てるが?』
「ああ、なんだ大串くんか…」
『なんだそのテンションの下がりよう。斬るぞコラ』
「何?電話切るのと、たたっ斬るをかけたの?」
『…』
「あー待て待て。用件があんだよ!」
『…なんだ』
「神楽とジミーは多分そっちに泊まるだろう」
『は!?』
「それはいいとして…ヤるのは阻止しろ」
『…何でチャイナ娘を泊めさせることを許したよ…』
「いや、帰りにしっかり神楽を送れよ、って行ったけど…どこに、って言ってねーし」
『いや、分かると思うけど…』
「つけこまれたら泊まるでしょ。てか俺なら夜デートなら帰さねえ」
『……そうだな…』
「納得するんだムッツリスケベ」
『ムッツリじゃねえ!つかお前も一緒だろうが』
「ムッツリじゃねえ、オープンだ」
『威張るな』
「…で、話は反れたがとりあえず、ヤらせるな。せめて未遂にしろ」
『…お前が連れて帰れよ』
「んな野暮なことできっかよ」
『その野暮なことをやらせるな』
「いいから!頼んだ!!」
『ちょっ…何がいいん―』
ガシャンと受話器を置く
「ふー…だからこいつ嫌いなんだよなー」
とは言え信頼してないわけではないから
“神楽の貞操が無事でありますように”
と祈りながら眠りについたのだった
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