そのままの自分を
…何故いつも朝、目を覚ますと必ずゴスロリ服があるのだろうか
体を起こしてまず目に入ってくるのは新品のゴスロリ服
首謀者は言わずもがな
とりあえず服を破壊して朝の支度をしてからガラッと東城の部屋を訪ね開ける
「わ、若!?せめて声は掛けてくだされ!」
「あ、次から気を付ける。ところで東城」
「はい?」
「いい加減ゴスロリ服やらナース服を僕の部屋に置くのをやめろ。お前とカーテンのシャーッとなるやつを一緒に破壊してやろうか?」
脅しじみたような口調で話すと東城は少し顔を青くしたが「いやいや、」と反論をし出した
「確かに勝手に若の部屋に入り寝顔をカメラに収めてゴスロリ服やらを置いてくのは悪いことかもしれません!けどしゃーないじゃないですか!若に似合うと思ったんですもん!」
「お前のしゃーないが分からない。ていうか寝顔を撮ったって…?後で処分する」
きっぱりいい放つと「あ゛あ゛あ゛…」と唸る東城
そんな東城を眺めてはあ、と小さくため息を吐く
それに気づいた東城は「どうしたんですか若」と僕の顔を覗き出す
「東城…お前は僕をどうしたいんだ」
「は?……お誘いですか」
「何のだ!いや、言わなくていい。そうじゃなくて…もうお前が分からない」
「と、言いますと?」
「過保護すぎるのは元々だったが最近はなんか…過保護っていうか…とりあえずウザい」
「そんな直球ストレートが来るなんて予想しませんでした。若、私も傷つくことを忘れないでくださいね?」
「ウザいんだ。いつもいつも…」
「…」
ため息混じりの発言に無言で沈んでいく東城
ガーン、かズーンの文字が背景にあっていいような雰囲気を醸し出している
そんな東城の胸ぐらを掴む
男に触ると反射的に──なんてことは起こらない
服に触るくらいなら平気なのだ
東城は自分が胸ぐらを捕まれていることに驚いたように反応した
「わ、若…?」
「お前はゴスロリ服を着たりナース服を着ていない僕は嫌いか?」
東城は勢いよく首を横に振り「滅相もない!」と全力で否定し出した
「若はどんな若でも一番ですよ」
「ゴスロリ服とか、必要か…?」
「いいえ!」
「ならもう持ってくるなよ」
妙ちゃんに教わったように笑顔でいい放つと東城は「しまった…」というような顔をしていた
しかしそれをスルーしてわかったな、と釘をさすと東城は「…はい」とあんまり納得いかないような感じの返事のした
その返事をしっかり聞いてから東城の胸ぐらから手を離す
時計を見ればそろそろ稽古の時間だったことに気づかされ、「じゃあな」と部屋から出る
「東城!」
最後、部屋の襖を閉めるために手を掛けてから東城の名を呼ぶと「?」という顔でこちらを見てきた
「お前はいつもの僕を見ていればいいんだ」
それだけ残してバンッと襖を閉める
稽古の時間に遅れてしまう
早く行かなくては
……とその前に、この火照った顔をどうにかしなくては
そのままの自分を
どこにでもいそうな着飾ってる僕じゃなくて
いつも通りの僕を見て
・東九
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