ネクロフィリアを愛している
グサッ
ナイフが私の腕に突き刺さる
血がボタボタと流れる
「神楽。良い子にしてた?」
真っ暗な中、笑顔で聞いてくる兄―神威に目を向け言葉を出すのが億劫でコクリと頷く
それを見た神威はナイフを抜く
「なら良いや。外には出たの?」
今度は首を横に振る
「ま、そうだよね。鎖で繋がっているんだもの」
そう、私は手首と足首に鎖が繋げられている
ここは電気も窓もひとつもなく、鉄のドアとかつては白だったベッド、そして壁、壁、壁…
私はベッドに鎖で繋がれ、大の字で仰向けになって寝ている
いつからこんなことになっているのだろう
白かった筈のベッドはいつの間にか赤黒くなっている
「あーあ…また傷が消えちゃった」
夜兎ってこういうとき嫌だよネ、と笑う神威
「あ、でも最近はアザが少し残ってるね」
弱くなった証拠だろう
体は元に戻っても私はもう気力が薄れていく
「ねえ、神楽。神楽は俺が好き?」
言葉で言ってネ、と脅すかのように言われ声を出す
「…好…き…ァル…」
かすれた声で返事する
そう言えば私はここに監禁されてから一度も飲み物さえ口に入れてない
神威はにこっと笑うとナイフを突き立てる
グサッ
グチャリ
グリグリとナイフで腹の辺りを掻き回す
「うん、俺も好きだよ」
でもね、と言葉を繋げる神威
そして私の耳元に近づく
「俺、神楽は死んだ方が綺麗だと思うんだよ」
毎回神威が私の耳元で言う言葉
その囁きはいつもより低い声で脳髄に甘く響き痺れるほど
「わかっ…てるア…ルよ」
分かってる
神威は壊れてしまった
壊したのはきっと私のせい
でも神威は私を憎むどころか愛してくれている
だからその愛に応えないといけない
無視なんてできない
それが私の償いかた
だから早く私よ
死ぬんだ
ネクロフィリアを愛している
愛しているよ、だからどんな仕打ちにも耐えるんだ
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