さあ、思う存分自慢しよう
「全く…何しに来たのかしらこの人達」
お妙は溜め息混じりにそうもらし、庭にいる男二人を縁側から眺めた。
男二人、銀髪天パの坂田銀時と神楽と同じ髪色をした男だった。
銀時が志村邸に来るのも良く分からないが、もう一人に至っては誰なのかすらも分からない。お妙は呆れた顔つきでお茶を啜った。
「あのさ、何でお前いんの?あ、何、もう俺を殺しに来たとか?」
「んー、まだ殺しはしないかな?あの美人さんをいやらしい目で見てるお侍さんを見つけたからつけてきちゃった」
「!?…何言っちゃってんのオォ神威くんっ!」
「事実だよ。ていうかその反応で事実の確証を得た」
神威と呼ばれたその男は爽やかな笑顔で言いのける。
すると神威はお妙の方を向き、「聞こえた?」とにっこり笑顔で聞いてくる。対するお妙も神威に負けじと笑顔で頷いた。
それを見た銀時は焦り顔になりながら「違うから!!違います、断じて!」と否定の言葉を全力で並べている。
その様子をけらけら笑う神威につられ、お妙も自然な顔つきで笑みを溢した。
「やっぱお侍さんは楽しいな♪」
「うるせー!何が『楽しいな♪』だ!こっちは楽しくないからね!穴に入りたいくらいだよ!」
「はいはい、もうあの美人さんを好きって丸出しだよね」
「まだ小出しにしかしてねーよ!…あ」
「うん、好きなんだ。へー、ふーん、そーなんだ」
「なんだこいつ、うぜーんだけど。めっちゃうぜーんだけどオォ!」
神威にまんまと乗せられた銀時は赤面をし、照れ隠しなのか盛大に怒鳴り散らしていた。
それに動じず爽やか笑顔を決め込む神威。
神威はごちゃごちゃ言う銀時を他所に、ふと縁側にいるお妙に目を向けた。
お妙は元々彼ら二人を眺めていたので当然ながらバチッと目があった。
すると神威はゆっくりと、しかし逃げる隙は与えないと言わん張りの足取りでお妙に近づいた。
「オネーサン、名前は?」
「あ、志村妙です」
「ふーん…妙、ね。俺は神威。よろしく」
そう言って差し出された手にお妙は戸惑いがちに握手を交わした。
そして神威がにっこりと黒いような笑みを浮かべたかと思えば、お妙はグイッと神威に引き寄せられた。
「!?」
「な、何してんだお前!」
「いやー、妙が可愛くてつい」
神威はそういうとお妙を更に引き寄せ、抱きしめた。
お妙は何が起こったのやらと目を点にしており、銀時はその二人の光景にまたも怒声を飛ばした。
「ちょー、おま!っざっけんな!お妙から離れろ!」
「えー…だって俺も妙のこと好きになっちゃったもん」
「んなっ!?」
「一目惚れしちゃった。ねえ妙、俺と恋人にならない?」
「ざっけんな!」
目をぱちくりしているお妙と、輝かしいほど爽やかな笑みの神威の間を無理矢理離す銀時。
睨みを聞かす銀時に神威は未だにけらけらと笑う。
お妙は冷静に事態を理解しながらまた縁側に腰かけた。
騒がしい奴等だ、と呆れているお妙にまたも神威が話をお妙に振った。
「妙、俺、妙を一生涯何からも守ってあげられる自信あるよ。夜兎だから力に自信あるんだ」
「な、何アピールしてんだコラ!俺なんかなあ!夜兎の大物ぶっ倒したんだぜ!こいつより強いぜ」
「俺より強いとか無いわー。あり得ないわー。鳳仙倒したって言っても大勢がかりでギリギリだったじゃない。」
「うっせーよ!お前は鳳仙倒せなかったくせに!」
「倒せなかったんじゃなくて倒さなかったの。阿伏兎と云業に止められて」
「…。ま、俺ァ仲間が…横の繋がりが広いからな。いいだろう」
「俺は何百、万の夜兎族を配下にしてるけど」
「お前何様!?」
「夜王様ってとこかな」
「ウザい!!ま、まあ?俺だって有能な部下がザッと一千万くらいいるかな」
「無能なガキ娘と眼鏡掛け機一機、の間違いでしょ?」
「あん?お前眼鏡掛け機馬鹿にすんなよ!?家の眼鏡掛け機は家事ができるんだぜ!」
「!何だって…眼鏡掛け機の癖に…」
「いや、眼鏡掛け機じゃねーよ。新八だコラァ」
ツッコミ不在の中、ここだけは新八が必ず言うであろう言葉をお妙が代わってツッコんだ。
と言っても呟く程度の声なので彼ら二人に届いてはおらず、話は続いていた。
「参ったか、クソガキ」
「くっ…いや、でも俺には──…」
「そこまでだ、団長」
ハッと気がつけば神威の背後には阿伏兎が突っ立っていた。
いつの間に、とお妙は目を疑ったがおそらく神威の保護者だろうとあまり気にせずお茶を啜る。
「阿伏兎!」
「ほら帰るぞ団長」
「えー…」
「帰れ帰れ!!」
「じゃあ最後に…妙、俺とお侍さん、どっちが好き?」
阿伏兎に腕を引かれながら神威はお妙に顔を向ける。銀時も同じくだ。
するとお妙は首を傾げてから銀時、神威を見据えて微笑んだ。
「まず、私の彼氏になる一番の条件は能力じゃなくて財力よ」
さあ、思う存分自慢しよう
その自慢に意味があるか無いかは考えましょう。
・銀→妙←神威+阿伏兎 ギャグ
×