ブラックコーヒー
ガコン、自販機から出たブラックコーヒーを手に取る
「月詠!」
後ろから愛しい彼の声が聞こえてそちらを振り向く
「銀時っ…お前、授業は?」
「俺もこの時間の授業はとってねーから。…何?コーヒー?」
恋人である銀時は私が手に持っていたブラックコーヒーを指差した
「ああ。たった今買ったところじゃ」
「ふーん…じゃあ俺も」
チャリンとお金を入れてピッと自販機のボタンを押した
そしてガコンッと勢いの良い音
「何を買ったんじゃ?」
「んー…ココア」
「ぷっ…」
「なっ!てめっ!」
「悪かった、だって…てっきりコーヒーかと」
くすくすと笑っていると「苦いのは苦手なの」と返された
「女の癖にブラックかよ」
「男の癖にココアとは」
「黙れバーカ!甘い方がおいしいだろーが!!」
「ガキ丸出し」
「なんか言った?月詠サン?」
子供のように騒ぐ銀時を横目にコーヒーを開けてゴクリと一口飲む
この苦さ具合が好きなんだよなぁ、としみじみ感じた
すると、口を離した瞬時に手からコーヒーが消えた
「一口もーらいっ!」
コーヒーは銀時の手に渡っていて
銀時はゴクッとコーヒーを飲み出した
「ああぁっ!ぬし、よくもッ…」
「うげー苦ッ!やっぱ無理。返す」
銀時は苦さに耐えきれなかったのかコーヒーを私に返してココアを飲み出した
…て言うか
これ、間接…
ボッと顔を赤く染め上げると銀時は「どうした!?」と心配そうに見てくる
どうしたも何も…
ぬしのせいだろうがアァ!!
「な、んでも無いっ!」
え、何これ
どうしたらいい…?
いや、飲めば良いよね!?
自分のだしっ!
けど、なんか恥ずかしいッ!!!!
なんで自分で買ったコーヒーをこうも悩んで飲まなきゃならないんだ!
「月詠〜?」
「なっ何じゃッ!?」
「コーヒー、飲まないの?」
「ッ…」
この野郎…
間接キスを分かっててやりやがったな…
ニヤニヤする銀時を睨みつつもコーヒーを口元に近づけていく
羞恥で死にそうだ!
「よくできました〜」
コーヒーを一気飲みすると銀時は笑っていた
かーっと赤くなっていると銀時は「別に恥ずかしがるもんじゃねーよ」とココアを飲みながら言った
「だって恋人同士じゃん」
「なっ…」
何を恥ずかしげもなくっ…
この時々発揮する天然さに私は呆気なく負けるのだった
ブラックコーヒー
銀)ココアも飲む?
月)ッ飲…まないっ!飲むかバーカッ!
・大学生カップルな二人の甘い話
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