この酔いはどこから?
「好きだ、幾松殿…」
ど、どうしたらいいの!?
頭の中がぐるぐるとかき乱されてるみたいで目眩が起きそうだ
私の左隣に座っている桂小太郎は顔を少し赤くさせて真剣な顔で私を見ている
こうなったのはたぶん私のせい
ついさっきの出来事に遡るのだ
◇◇◇◇◇(会話のみ)
「今夜は飲むわよ!」
「いや…俺は今日は疲れていてだな…多分すぐに酔い潰れるぞ?」
「情けないわね〜」
「真選組に追われては逃げの繰り返しだったのだ」
「いつも通りじゃないの」
「…だが疲れた。歳かもしれん」
「アンタ私より若いでしょ?嫌味?」
「幾松殿の歳を知らん。いくつだ?」
「さ、飲むわよ!」
「…」
◇◇◇◇◇
これがいけなかったのよね…
歳を聞かれてか、少し苛立ってお酒をどぷどぷ注いじゃって…
我ながら大人げない
で、それはさておき…この状況をどうしようか
左手をガシリと桂に掴まれ、移動はできそうもない
「幾松殿…俺は真剣に幾松殿のことが好きなんだ」
「うあ、あ…わ、分かったからっ!」
「幾松殿はどうなんだ…?」
「そっそれ、は…そのっ…!」
不意に顔を近づけられてかーっと顔を赤く染める
空いてる右手で桂の胸板を押してみるがびくともしない
むしろ迫ってきている
「ちょっ、バカッ!近いっ!」
ドッドッと心臓は今にも破裂しそうに悲鳴をあげている
桂はそれに気づいてなのか口角を上げる
それがまた不思議なかっこ良さを纏っていて不覚にもときめいてしまう
「じゃあ…返事をしてもらおうか」
「っ!やめっ…!」
桂の顔が肩に近づいたと思えばふっ、と耳に息をかけられる
「…くすぐったいのか?…じゃあもう一回…」
「!っバカバカバカー!!やめっ…やめなさいっ!」
いつもの桂じゃないっ!と心臓は焦っている
どうしたらいいのよー!!
半泣きで目を瞑ると桂の声が耳から脳髄に浸透するほど甘く囁かれる
「世界中の誰よりも好きだ幾松殿…幾松殿は…?」
「わ、私は…私もす…」
大吾…
きゅっと胸が締め付けられる
彼のことを裏切るような気がして答えづらくなった
心の何処かにいる大吾に申し訳ない気がして言葉を失う
「…俺は大吾殿には劣るか…?」
桂は耳から離れて正面に顔を移す
「ーッ…そんな、こと」
「大吾殿の代わりには…なれないか?彼の代わりに俺が幾松殿を幸せにしたい」
「…私、多分大吾を忘れないよ…?」
「忘れなくていい…」
「バツイチだよ?」
「構わない」
「私でいいの…?」
「今の幾松殿がいいんだよ」
バカだ
バカすぎる
こいつは今酔ってんだよ?
酔い任せかもしれないんだよ?
そんなのを信じちゃうなんて…
バカすぎるよ、私
「幾松殿……幾松殿の心も体も俺が盗ませてもらうが…いいか?」
「…聞くな、バカ…」
コテン、と桂の胸板に顔を埋めると頭を撫でられ額にキスを落とされた
この酔いはどこから?
それから先を聞くのは野暮なことよ
・桂幾、珍しく酒に酔った桂に本気スイッチが入って幾松を口説きまくる
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