埃まみれのコイゴコロ
「なあ月詠」
「…なんじゃ」
ここから外に出てみたいな、なんて
「馬鹿言うな。わっちは出られん」
知ってるよ、と隣にいる銀時は酒を注ぐ
「…身請けの話とか…きたの?」
「…。断ったがな」
花魁になって幾年
ここまで来るのに何年かかり、何度抱かれたろうか
これから先は気に入らない客とは会わずにすむ
喜ばしいことだ
「わっちは銀時しか…愛しておらん」
そのために
ここまで頑張ってきたのだから
銀時はフ、と笑いこめかみをつついてきた
「けど、お前が花魁になると金が必要だわ」
「…すまない」
「謝るとこじゃねーけどな」
ようやく俺以外がお前に触れないことは喜ばしいよ、と銀時は笑った
「最近は神楽が頑張っておる」
「ああ…あの娘かぁ…」
可愛らしい顔立ちでつい最近、初見世が終わった
その初見世の相手は、もとから一目惚れしていた「沖田」と言うこれまた美しい顔立ちの男
「あの娘こそすぐに身請けされそうだな」
「主のようにあの沖田と言う奴も何処の隙もないほどに通っておるぞ」
だからあまり心配しておらん
銀時は「そうか」と酒を飲む
「あーあ…次は俺が身請けするための金をまた稼がねえとな…」
なかなか貯まらないんだよな、と愚痴る銀時
そりゃ、あれだけ毎日頻繁に通っていたんだ
むしろ通えていたことの方がすごいくらいだ
「年季明けにもらってくれればいいはずじゃが?」
「それ、いつ?明日?」
「…」
ほら見ろ、とわあわあと愚痴る銀時
「あまり喚くな」
「…へいへい…。ま、何とかして早く金を貯めてお前を連れ出すからな」
月の光が隙間から差し込む
銀時の笑顔が見えて、私も笑った
「期待してるぞ」
埃まみれのコイゴコロ
はやくこの汚い籠から
連れ出してくれ
・遊女パロ
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