何年たっても
朝食の美味しそうな匂いで目を覚ます
ああ、今日は日曜日か…、と布団から這い出る
階段を降りて、キッチンに向かえば愛しい妻──ミツバが朝食を作っていた
「あら、おはようございます、十四郎さん」
「あ、ああ…おはよう」
ミツバは俺に気づいたのか、くるりと振り向いて柔らかい笑顔で迎える
少しながら大きくなったお腹には新しい命が宿っている
そんな彼女を助けながら俺も朝食の準備をする
そして二人、食卓につく
他愛ない話をして、「今日、どこか行かないか?」と誘う寸前でインターホンに遮られる
「ちょっと行ってきますね」
ミツバはそう言って玄関に行ってしまった
すると懐かしい声が聞こえ、俺も玄関に出る
「総悟!チャイナ娘」
いたのは義弟の総悟とお団子ヘアーのチャイナ娘──神楽だ
「おう、久しぶりアルなトッシー」
「トッシー言うな」
「相変わらずマヨネーズ飽きねェんですねィ。姉上の作った食べ物も犬の餌にしてんじゃねーだろーな」
「当たり前だろ」
すごい勢いで凄まれ、少し後ろに引きながらも対抗する
「さ、そーちゃんも神楽ちゃんもあがって」
ミツバは笑顔で二人を迎え入れ、二人も笑顔で入る
久しぶりのデートは諦めるしかないな、と少しため息をつきつつも二人を迎え入れる
「結婚式以来アルなぁ…トッシーとミツバ姉に会うの」
「そうね」
「ところで、なんで行きなり来たんだ?」
「姉上の様子見と、これでさァ」
総悟が見せてきたのはウエディングドレスのチラシ
「…え、まさか」
「二人も結婚…!?」
ミツバと二人で聞けばチャイナ娘がコクリと頷く
「チャイナがようやく結婚できる歳になったんで、やっちまおうと思って」
本当は招待状を送りつけて驚かすつもりだったんですがねィ、と総悟はチャイナ娘を見る
「ミツバ姉たちにウエディングドレスの相談とか…アドバイスとか聞きたくて」
「神楽ちゃんかわいいっ」
ミツバは赤くなって俯くチャイナ娘を抱き締める
…なんか
ちょっとムカつく
羨ましいぞチャイナ娘!!
「…にしても、よくOKされたな…銀時は親代わりだからすぐ許さなかっただろ?」
「まあ…でも旦那は割と簡単に許してくれやした」
3/4殺しされたぐらいでィ、と総悟は笑う
…それ、もうほぼ死んでんじゃん
「問題はお義父さんとお義兄さんでしたねィ」
あれは神楽が止めてくれなかったら死んでやした
俺の時は総悟に殺されかけたが、まだマシだと思った自分がいた
「総悟!いつまでトッシーと話してるアルか!?」
ミツバとウエディングドレスの話をしていたチャイナ娘が総悟に怒鳴る
そして結婚式の話に参加する
少しずつ結婚式の話を進めていき、一段落つくとミツバがお茶を出してきた
「お前なァ…少しはジッとしてろ」
ミツバは「すいません」と笑う
「けっこう大きくなってきやしたねィ」
「まだまだこれからよ」
「生まれたらいよいよ二人とも親アルな」
チャイナ娘にそう言われ、ミツバと顔を見合わせて微笑む
「親、かぁ…いいお母さんになれるかしら」
「ミツバ姉なら大丈夫アルよ!…やっぱり、不安アルか?」
「嬉しい反面、不安も募るわ。ちゃんと育てられるか、とか…」
ミツバはお腹に手をやる
「…俺がお前を支えるから…一人で抱え込ませたりなんかしねェよ」
「十四郎さん…」
ミツバはにこりと微笑む
「カッコつけてんじゃねーよ」
ガッと総悟に蹴飛ばされる
「てめ、総悟オォ!!」
ドタバタとまた騒がしくなる
その光景はいつだって同じ
「…どんなになっても変わんないアルなぁ…」
「ふふっ…そうね」
何年たっても
この絆は切れることがない
だから不安なんていらないよ
・現パロ 土ミツ夫婦の家に沖神が遊びに来る話
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