抜け駆けダメ!絶対!!
「おっ妙さ〜ぐぎゃふっ…」
庭からお妙の元に飛び込んできた近藤はお妙の投げた皿によって撃沈する
「あら?手が滑っちゃったわ?なんか声が聞こえたけど気のせいね」
そう言って近藤に背を向けると後ろからパチパチと手を叩く音
あのゴリラ…まだ生きてたのか、と振り向く
「…って土方さんじゃありませんか」
「まあ鮮やかに局長を倒しやがったな…」
土方は煙草を加え、近藤の頬をペチペチ叩く
「えーと…なんで居るんですか。不法侵入ですよ?いいんですか警察の癖に」
笑顔で言ってのけるお妙に土方は苦笑いしながらもポケットを漁る
その行動に首を傾げると「ん、」と紙を目の前に出される
受け取るとどうやらそれは映画のチケットのよう
「次の日曜が休みだから…一緒に―…」
ドガンッ!
その音と共にお妙の目の前にいた土方は右へ吹っ飛んでしまった
「姐さん、それは俺と行きませんかィ?本当はそのチケット入手したの俺じゃなくて山崎なんでィ」
「へ?ああ…ん?」
結局これは沖田さんじゃなくて山崎さんの物なんじゃない
ややこしい
「チケットは頂くわ」
「姐さ…」
「山崎さんと行きますから」
お妙がそうニコリと微笑むと茂みからいきなり山崎が現れる
警察がこうも不法侵入をしていいものなのか
山崎はそんなことは気にせず、こちらに近づく
「マジですか姐さ―…」
一瞬の出来事だった
山崎は、土方と沖田によって制裁され、近藤の二の舞になる
お妙は呆気にとられ、呆然とその光景を見る
すると庭では近藤は生き帰り、土方、沖田で映画チケット争奪戦が行われていた
「このチケットは俺のだ!」
「いやトシ、俺に譲ってくれ!それは俺とお妙さんが行く!」
「今回だけは譲れねえ!俺が行ってくる!」
「なら死ね土方アアァ!そいつぁ俺が行きまさァ!」
お妙は、なんて賑やかなんだ、庭の光景を呆然と見ている
すると玄関から新八の声が元気よく響く
新八は庭まで来るとお妙同様に庭の光景を呆然と見ていた
「…姉上…なんであの人たちがいるんですか?」
「んー…不法侵入?」
「はっ!?」
新八はしまったなあ、と呟く
「どうかした、新ちゃん?」
「あの…銀さんが来てるんですけど…」
「…しまったわね」
銀時と土方は犬猿の仲だ
家で喧嘩なんて迷惑極まりない
帰ってもらおう、と新八に提案する
「いや、もういるんですけど…」
遅かった…
銀時はさも始めからそこに居たかのようにチケット争奪戦に交えている
「てめっ!いつからいやがった!?」
「ついさっきだ。そのチケットは俺が貰う。お妙とちょっくら行ってくるわ」
「お妙さんは俺と行くんだアアア!」
「アイツがゴリラなんかと行くかっての。ついでにマヨラーもニコチンも瞳孔が開きっぱのやつも無理だろうな」
「それ全部俺じゃねーかアアア!!!!」
「旦那、こればっかりは譲れませんぜ。諦めなせエ」
「総一郎くんこそ諦めなさい」
「総悟でさァ旦那」
「ってかそもそも、それは俺のですよ!?」
辺りが静まる
「…山崎さん、いつからいたんですか?」
おずおずと新八が聞くと山崎は背景にガーン…とでも書かれていそうな態度をとり、隅の方へ膝を抱えて座り込む
「…とにかく、そのチケットは俺が貰う」
「いや、俺だ」
「いや、俺でさァ」
「ふざけんな、俺だ」
何やら燃え上がる炎
「じゃあ、男らしく勝負といこうか」
銀時の提案に皆が同意し、ゴクリと唾を飲む
お妙と新八は呆然と見守る
「いざ」
「「「「レッツパーリイイィ!!!!」」」」
抜け駆けダメ!絶対!!
ところで、あの人たちは何であんなに真剣なのかしら?たかが映画ぐらい一人で見に行けばいいのに
姉上…流石に鈍すぎじゃないですか?皆さんが可哀想に見えてきました
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