不器用な愛で方
「晋助様ああぁ!」
バタバタと自室に駆け込んできたのは赤い弾丸―来島また子
「…うるせーぞ」
「すいませんッス!でも、だって、晋助様が怪我したって聞いて…」
徐々に語尾が消えていく
まあ、怪我はしたが…頬に一筋のかすり傷だ
焦る理由が分からん、と首をかしげ、隣に立っている来島を見上げる
…絶景だなオイ
来島は足を広げて立っているので尚よく見える
「?晋助様?どうかしましたか?」
「…いや、別に」
来島は頭に?を浮かべていたが気づかないことにしておいた
ポンポン、と自分の隣を叩く
「まあ座れ」
「えっ!?そ、そんな恐れ多いッス!私はただ怪我を手当てに…」
「じゃあ頬のかすり傷を手当てしろよ。座んなきゃできねえだろ?」
来島はあー、うー、などと唸り暫く時間が経ってから隣に座った
そしてかすり傷に絆創膏を貼る
「にしても…一体誰が晋助の頬に傷なんか…」
「気にすんな」
「気にするッス!私がちょっと殺ってきます」
「殺らんでいい」
今にも人を殺しそうな勢いで自室から出る来島の腕を掴む
「何で止めるんスか!?」
「いや、普通止めるだろ」
「大丈夫ッス!人目につかないとこに拉致るんで」
グッと親指を立てる来島
アホか
「そういう問題じゃねーよ」
「どういう問題ッスか」
「お前が怪我するかもしんねー…だ、ろ」
…ん?
何言ってんだ俺
別にコイツが怪我をしよーが関係ねーだろ
「…大丈夫ッス、万斉も連れてくんで」
行くッスよね?、と自室のドアの方に声をかける来島
すると半開きのドアから右手が出現する
すると来島は俺の手からするりと抜け、ドアに向かう
「早速行くでござるか?」
万斉の姿は外に居るので見えないが声は十分に聞こえた
その言葉に返答し、ニッと笑う来島
「もちろんッス」
何故だか分からないがその二人のやり取りが気にくわなくて
すぐにその場から動き、自室から片足出した来島をグイっと自分の元へ引っ張る
「ふえ!?」
なんとも間抜けな声を出す来島
万斉もその声に反応する
「また子、どうした…晋助?」
「何だ」
「いや…一体どうした」
自分でも分からん
自分のとっている行動はなんなんだ
来島を引き寄せ、抱き締めるような体勢ではないか
「し、しししっ晋助様!?どうしたッスか!?」
来島は真っ赤になり、テンパっている
「…万斉、来島には用があっからテメー一人で仇討ちしてこい」
万斉は暫く無言でこちらを見、ニヤリと笑う
「妬いてるでござるか」
「あ゛?誰がこんな女…」
「誰もまた子なんて言ってないでござるよ」
「…早く行け」
なんだこの敗北感…
無性にイラついて万斉を追い出す
「行ってくるでござるよ。」
万斉はそう笑うと此方に背を向け歩き出した
不器用な愛で方
晋助様?
なんだ
ご用があったのでは…
あー…
無ければ私も万斉についてきたいッス
…肩が凝った
分かったッス!
(二人になんかさせたくねーんだよ)
※実は高杉はまた子がかなりお気に入り
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