謝罪はお断り
寝間着に着替えた後、なんともタイミングよく、ガラガラと北斗心軒の戸が開く音がした
あ、鍵交うの忘れてた
仕方なく自室から店へ下りる
「悪いけどもう閉店ー…!?」
おどろいた
戸の前にいたのは桂小太郎
別に桂がいたことに驚いた訳じゃない
「ど、どうしたのさ!?その傷!!」
服は血まみれ
胸からまだドクドクと血が湧き出ているのが分かる
すかさず桂の側に駆け寄る
月明かりが桂の顔を浮かばせる
顔にも血がついていた
「何やってんの!?こんなに…傷…」
「すまん…ちょっと手こずった。幕府の犬どもからかくまってくれ」
外には真選組の車がたくさん走っている
桂はどこだ!まだ近くにいるはず!!
「とっ取りあえず中に入っ…きゃ!?」
ゴツッと頭を床にぶつける
どうやら私は桂に押し倒されたようだ
「…早く退きなさいよ」
「…」
「…」
もしかして…
気、失ってる!?
嘘でしょ!お、重っ!!
まだ戸が閉まってないのに!!
焦っていると何やら白いオバケ…じゃない!
「エリザベスさん!」
エリザベスさんはじっとこちらを見る
『何してんですか』
「桂が!気、失ってるみたいで!真選組、桂を探してるから!閉めて!どかして!」
『…いまいち何を言ってるのか…』
「あーもう!ぐちゃぐちゃよ!」
『大胆ですね何プレイですか』
「違うわー!!とにかく桂退けて!!」
エリザベスさんに桂を退かしてもらい寝室に桂を運ぶ(運んだのもエリザベスさん)
いつの間にか血は止まっていた
取りあえず包帯!
『あの幾松さん』
気の看板で肩をつつかれ返事をする
「何?」
『何かすることありますか?』
「そうね…桂の血で店の入り口が血まみれだと思うから掃除、お願いします」
ついでに戸の鍵、閉めといてください
エリザベスさんは寝室から出ていき店のほうへ行った
一息ついてから
「…包帯、巻かなきゃね」と手を動かした
「ん…」
「あ、起きた?」
「幾、松…殿」
どうやらまだ寝ぼけているのか視点がはっきりしていない
「体の調子は…?」
「問題ない」
「そう」
桂は上半身を起こすと少しだけビクリと体を強ばらせる
「…今、何時だ?」
「まだ3時。寝てなさい」
「すまない…でも、もう幾松殿が店をやる時間だろう」
「何言ってんの?まだ私は寝てるわよ」
桂は目をぱちくりさせる
「え、でもそれ店用の服だろ?」
副を指さされああ、と反応する
「あんたの血で寝巻きが汚れたのよ」
「それは…すまなかった」
「いいわよ別に」
そんなことより、と、桂の頭に手をつける
「寝ろ!」
「あだぁっ!?」
ゴッと桂の頭が幾松によって枕にめり込む
「私よりは痛くないはずよ」
「?」
「とにかく寝なさい。今度はその怪我が治るまで雨宿りしてったら?」
「…すまない」
桂はそう言うと目を閉じる
「あんた、ここに来てから謝ってばっかり」
ふふっと少しだけ笑う
そして桂の頭を撫でる
「私は謝られるより感謝される方が嬉しい」
桂はそうか、と呟く
「幾松殿」
「ん?」
「助けてくれてありがとう」
なんだろう
顔が緩む
「どういたしまして」
そう微笑むと桂も少しだけ微笑んですやすやと眠りについた
謝罪はお断り
謝罪も必要だわ。
でも感謝されるほうが気持ちいいじゃない?
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