まだこの気持ちは知らない
「…何でお前がここにいるんじゃ」
「あん?悪いかこのヤロー」
朝一番に晴太に起こされて来てみれば、この男──銀時がお茶を飲んでいるではないか
「おーい…月詠?」
「!」
ついさっき悪態をついた後から反応しなかったからか、いつの間にか目の前には銀時が立っていた
「なっ…ち、近寄るな!」
なぜだか分からないが動機が走り銀時の胸板を押す
「?本当にどうしたんだお前」
「何もありんせん!離れてくれれば」
「?何でそんな焦ってんの?」
「焦ってない!だから離れてくれれば問題ないでありんす!」
「…」
「ていうか、離れろ!」
「いや、なら押せばいいじゃん」
「は?」
押しているじゃないか、と言おうとしたが言えなかった
なぜだか銀時に触れている手に力が入らずにいたのだ
「ねえ、マジでどうしたの?」
「うるさい!」
「顔も赤いけど」
「だっから何でもない―」
「何でもなくねーだろ。…もしかして…好きなのか?」
ドッドッドッ…
心臓の音が頭にまで響いてきてうるさい
「好きなのか?こういうプレイ」
「…………………は?」
「だから、何て言うの?焦らしツンデレプレイ?流石吉原の女は──ぐげふっ」
最後まで言う前に鳩尾に殴り込む
「黙りんす。わっちがそんなことを主にするつもりは毛頭ない」
倒れ込む銀時にきっぱり言い捨てる
「んだァ急に元気になりやがって…」
「わっちは元から元気じゃ」
「あっそ」
どうやらもう元気になったらしい銀時はむくりと起き上がる
「そういえばさっき何か言おうとしてたのはなんじゃ?」
言い終わる前に中断させたもののやはり気になる
銀時はああ、と呟く
「流石吉原の女は上手いなって」
「?」
「だから誘いがうまいって言ってんの。流石の銀さんも少しグラついちゃったよ」
「…は、おま、何言っ、」
「月詠さん、日本語はしっかり話しましょうね」
「う…うるさい!わっちはもう行く!」
「おーい、まだ顔が赤いですよ〜」
遠くで銀時が言っているのが聞こえたが、知らないフリをした
まだこの気持ちは知らない
頭ァ顔が赤いですけどどうしたんですか?
うるさい!何でもないでありんす!
×