Happy wedding
綺麗に施された化粧に髪型。
鏡に写った純白のウェディングドレスを纏った自分を眺めてついつい、綻んでしまう。
すると、コンコンとノックの音。
「どうぞ」と外にいる人に声をかけると、ドアが開く。
私が一番始めに目にしたものは目の前に差し出された色とりどりの花束───…
「ミツバさん、おめでとう」
「おめでとうアル!」
花束を受け取ってから次に顔を出したのはお妙さんと神楽ちゃん。
お妙さんは大人っぽく、神楽ちゃんは可愛らしいドレスに身を包んでいる。
二人の笑顔と言葉に照れながら、「ありがとう」と笑う。
「ミツバ姐可愛いアル!」
「本当?」
「土方さんにあげるなんて勿体無いわね」
「ホントでさァ。姉上、考え直してくだせェ」
少しおかしな沈黙ができる。
何処からかこの場にいなかった筈の声が…
「サド!お前いつの間にいたアルか!?」
「ついさっき、でさァ。何やらうるせーアルアル声が聞こえたんで、姉上が危ない…!と思ったんでさァ」
「私の何処が危険アルかアァ!!」
「すぐに暴力振るところでィ!」
神楽ちゃんの攻撃を間一髪で避けるそーちゃん、彼は私のたった一人の大事な弟。
今回の結婚の反対派だったが、渋々許してくれた一人である。
「貴方達、それ以上騒いだらどうなるか…分かってるかしら?」
あまりにも喧嘩がヒートアップしそうな頃合いにお妙さんが制裁に入った。それにより、二人ともにらみ合いながらも喧嘩をやめる。
良かった、流石に式場を壊しはしないだろうけれど、壊したっておかしくない二人なので、安堵の息が漏れる。
「そーちゃんも祝いに来てくれたのよね…?」
「…本当は嫌ですが…姉上が笑顔なら…」
嫌だけど…、と声のトーンを落としながらそーちゃんは下を向いた。
しかし、最後の辺りに「おめでとうごぜーます」とぶっきらぼうに言われたのを聞き逃さず、その言葉に「ありがとう」と微笑む。
「そういえば銀さんや近藤さんは?」
「ああ、多分土方のとこじゃないかしら」
「おいサド、お前も男共のところへ行けヨ」
「嫌でィ。野郎に会ったらきっと殺人犯して捕まる」
「何アルかその自信」
「本当に、仲良しね…」
またまた喧嘩腰の言い合いから始まるそーちゃんと神楽ちゃんが何だか微笑ましくて、クスリと笑う。
その私につられたのか、お妙さんも笑い出す。
「そうね、あの二人はどうなるのかしら」
「私はどんな関係性になったって嬉しいわ。神楽ちゃんは妹みたいな存在だもの」
「そうね…未来は楽しみだわ。今日はミツバさんたちが主役だけどね」
「あ、ブーケトスするから頑張って取ってね、お妙さん」
そう言って笑うとお妙さんも「もちろんだわ」と勝ち気な笑みを見せた。
さあ、そろそろ時間だ。
「じゃあ私たちは式場にいるわね。ほら、行くわよ神楽ちゃん」
「分かったアル!ミツバ姐、また後でネ。…あれ、サド、お前は行かないアルか?」
「沖田さんはいいのよ。エスコートする人だから」
「?…ふーん…」
それを最後にドアは閉まり、部屋には私とそーちゃんだけ。
そーちゃんは不機嫌そうな顔を見せていたけど、吹っ切れたように清々しい顔を見せた。
「今日の姉上、癪だけど今までで一番綺麗でさァ。」
そう言って見せてくれた笑顔に、どうしよう
泣きそうだ。
それを察したのか、そーちゃんは「泣かないでくだせェ」と私に近づいた。
「泣くのは土方さんの前でお願いしまさァ」
「ありがとう…そーちゃんっ…」
嬉しくて嬉しくて、いつの間にかそーちゃんに抱きついていた。
そーちゃんは驚いた反応をしたけれど、同じように軽く抱き締められる。
「…土方さんが見たら妬くだろうな」
「…いーの、焼きもち妬かれたいもの」
「時々Sですよね、姉上」
あはは、と笑うそーちゃんに私もつられて笑う。
気持ちが大分落ち着いた頃、抱擁をやめる。
「時間でさァ、姉上。行きますよ」
「うん、エスコートよろしくね。そーちゃん」
Happy wedding
・結婚の話
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