甘い言葉に酔う
※現代っぽい…?同棲してるっぽい←
「ミツバ、」
仕事から帰ってきた土方は顔を赤らめたまま玄関先に立っている。
ミツバはその様子から、彼は仕事で飲んできたんだろうと正確に判断して少しふらついている土方を支えようと近づいた。
いつもならば「悪い」などと一言謝ったりしてミツバに負担をかけさせないよう体重はあまりミツバにかけない配慮をする土方だが、余程飲まされたらしい今夜はそんな配慮は一切無かった。
むしろ逆に彼はミツバの後ろから抱きついていたのだ。
「!?と、十四郎さんっ!?」
予想外の出来事にミツバは目を丸くして固まった。
土方の荒い呼吸と体温、そしてお酒の匂いがミツバの鼻を掠める。
ミツバがちら、と横目に土方を見れば顔はすぐそこ。
その顔の近さにミツバはビクッと肩を揺らして目線をしたに下ろす。
土方はそれを見て、少し顔を綻ばせた。
「なァに照れてんだ」
「…。と、とにかくもう少し自分で立ってください」
「介抱はお前の役目だろ」
「何ですか、それ」
にやにや笑いながら土方はミツバを眺める。
彼女の困った顔を堪能しているのだ。
いつもならば土方はミツバを困らせることなどしない。しかし、今は「いつも」ではない。どうやらしっかり酔って自我を失っている彼は、愛しい彼女であるミツバを困らせたい願望があるようだ。
だからなのか、未だに玄関からは動かないし体重もミツバに預けたまま。
「もう…どんだけ飲まされたのよ…」
若干呆れ口調のミツバの言葉に土方は「仕事だったから」とぎゅうっ、とミツバを抱き締める力を強めた。
その力はいつもより遥かに強かった。いつもより制御が緩いのだ。
だから、より強く感じる力と体温にミツバは痛いと感じる前に何処か嬉しくて、口角を少し上げた。
「いつもの十四郎さんじゃないみたいね」
「…そーか?」
「そうよ。…銀さんに似てるわね」
甘えたがりが、と付け足して笑うミツバにはきっと何も深い意味はなくて、ただ思ったことを言葉にしただけなのだろう。
しかし、土方に「銀さん」は禁句だった。
忌み嫌っている「銀さん」が元々似ていることは土方だって承知だが、それを恋人に言われる事はやはり良い気はしない。
そこだけは大分酔っていても流せるような所ではなかった。否、酔っているからこそ、流すことができなかった。
土方は顔をしかめて、ミツバの耳を噛んだ。
もちろん痛くないように、所謂甘噛みだ。
ミツバは体をピクッと動かし、顔を赤らめた。
「な、何…?」
「万事屋の話、したからお仕置き」
「は、はいっ!?本当にどうしちゃったんですか…?いつもなら普通に流してる話じゃないですか?」
「…。俺が本当に流してると思うか?」
その声は冷ややかで、ミツバも少し固まってしまうほど。
しかし、ミツバにとっては本当のことを言ったまでであって変な事は言っていない。彼女はそう割りきって真っ直ぐと土方をとらえた。
「お前の言葉なんざ、流せるわけねーだろ。どんな些細な事だってこっちはしっかり記憶してる。愛するお前の言葉を聞き流すなんてしたこたぁねーよ」
「え…」
「お前が万事屋達と仲良いのは分かってる。だから、万事屋の話が出るのは仕方ないと思ってる。いつもは下らない嫉妬なんかしねえように冷たくあしらってるだけだ。」
本当はしっかり細かく聞いてるから、それによって大分ムカついて隊士の誰か(山崎とか山崎とか)に八つ当たりしちまってんだよ。と、半ば怒り気味に話す土方。
しかし、そんな土方とは打って変わってミツバは顔を更に赤くして、火を噴いても良いんじゃないかって位だ。
そのミツバの様子に土方は「どうした」と声かける。
「あ、え、あの…嬉しいのと恥ずかしいのと…」
「は?」
「だ、から…愛するとか…嫉妬とか…」
語尾が小さくなるミツバに土方は「へ?」と間抜けた声を出すが、何か思い付いたのか黒い笑みを見せる。
「ふうん…?こう言うの、弱いわけ。」
「弱い、って言うか…その、」
「いつもお前には勝てなかったけど、こりゃいいな」
「な、なんですか…」
嫌な予感しかしないと言わんばかりの笑みと空気にミツバは苦笑いをする。
再び口開いた土方から降り注がれる言葉は甘い甘い言葉ばかり。
その甘すぎる言葉にミツバが耐えられなくなるのはもうあと少し───…
甘い言葉に酔う
・とっつあんか誰かに酒を飲まされた土方が普段やらない恥ずかしいこととか台詞とかバンバン言ってミツバを照れさせるところ
・Sで焼きもち焼きの土方
×