星空の下
パチン
何度目だろう
この携帯を開くのは
「なあに?ミツバ、最近ずっと携帯見てばっかだね」
「あ、あはは…」
前の席の友達に指摘され、苦笑いをする
「毎時間、授業終わったら見てるよね」
近くにいる友達も集まる
どうかしたの?と聞かれては苦笑いでごまかしていたが
「彼氏?」の一言で私の反応が変わってしまったようで
「そういやいるよね」
「会社員だっけ?」
「じゃあ社会人かあ…」
「…うん」
「成る程ね〜。連絡待ちなの?」
「それも、なんだけど…最近会ってないから…」
連絡しようかな、なんて考えていたところ
でも仕事の邪魔をするのは嫌
会いたい、なんて
我が儘に過ぎないことは分かってるもの
「でもさ、無理じゃない?社会人と学生だよ?時間的にも、むぐっ!」
「余計なこと言うな!ミツバ、気にしちゃダメだよ?」
「あ…うん…」
「ぷはっ…えー…私はミツバちゃんを思っていったんだよ。やっぱ、学生は学生と付き合うのがいいって!ミツバちゃんなら周りの男子がほっとかないしさ」
「いい加減にしろ!このKY!」
タイミングがいいのか悪いのか、チャイムが鳴った
それと同時に先生が入ってきて、授業が始まった
心の中はぐるぐると嫌なモノが回ってる
やっぱり、学生と社会人が付き合うのは無理あるのかな
最近…
ううん、もう一ヶ月以上会ってもないし、声さえも…
携帯には下書き保存された彼宛のメール文『会いたい』
いつも送信ボタンが押せずじまい
こんなんでやっていけるのかな
不安が頭をよぎって消えない
「ミツバ…わたしもさ、ミツバを思って言うけど…やっぱり、社会人とは付き合うのは難しいよ…?」
「うん…」
「嫌なこといってごめん…」
「ううん、心配してくれてありがとう」
帰りがけに言われた言葉は重くて辛いけど
心配してもらってて
何より正しいから
ピリオドを打つために部屋のベッドに横たわり、携帯を握りしめる
「…今まで…ありがとう、十四郎さん」
そして、さよなら
これが正しいんだよ
まだメールも電話もしていないのに涙は今にも流れそうだ
「…やっぱり、口で伝えた方が後腐れ無くていいよね」
携帯のボタンを押すのに指が震える
いざ、
その瞬間
♪〜
彼からの電話だ
すぐに電話に出る
「も、もしもし…」
『もしもし…ミツバ』
「十四郎さん…」
ああ、彼の声だ
電話越しからだといつもより低めの声
その優しい声に少し心が落ち着く
『ごめん…最近連絡できなくて』
「…ううん…嬉しいよ」
『今…何してた?』
貴方とのお別れの仕方を考えていた
「特に、何も…」
言えるわけないじゃない
すると向こうから躊躇いの息
『今から…会えねえ?』
「!」
外はもう真っ暗
「え、と…」
『て言うか玄関来て』
は?
嘘でしょ?
頭は状況についていけてないのに、
体が
足が速さをあげて玄関に向かっていて
「うおっ!!びびった」
玄関を勢いよく開ければ、居たのは携帯を片手に煙草を吸って待っていた彼
「十四郎さん」
「久しぶり、ミツバ…何か泣いてた?」
タバコを消して、私の顔を覗き込む
「ずっと…会えてなくて…寂しくて…」
止まった涙が出てきそうなのを下唇を噛んで止める
すると、ふわりと彼の匂いがして
ようやく抱き締められたことが分かった
「ごめんな…ようやく仕事が一区切りついたよ」
「おめでとう、です」
「ありがとう」
「私…本当は…社会人とは付き合えないかな、って…」
そこまで言うと抱き締められていたのがはなされ、強引にキスされる
「っん…十四郎さん…」
「これからは時間はできたし、会えるし、話もできるから」
また抱き締められる
さっきよりも少し強く
でも優しく
「…メールとか…していいですか?」
「当たり前だ。電話だってしてほしい」
もしその時に出れなかったら折り返すよ
と、付け足された
「…声が聞きたかっただけ、でも…いいの?」
「正当な理由だろ。なお嬉しいよ」
その言葉が嬉しくて
私も彼の背中に腕を回した
星空の下
その後
彼が帰ってすぐに
会いたくなって
すると携帯が鳴った
ディスプレイには『十四郎さん』の文字
※社会人土方×大学生ミツバで、生活時間のずれから来る不安を抱えるミツバを優しく包む土方
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