嫉妬日和
いつもの朝、いつもの食堂…
そして、いつもの光景
「姉上っ!この席が空いてますから座ってくださいっ」
「ありがとう、そーちゃん」
姉上と呼ばれる沖田総悟の姉、ミツバは総悟に連れられて席に座った
ミツバが来てからというものドSと言われた弟は全くもって姉のいるときはその姿を見せなくなった
総悟は二人分の朝食を運んで席に着く
仲睦まじいことで
「…あの、副長?」
「あ゛?なんだ山崎」
「さっきからミツバ殿と沖田隊長のほう睨んでません?」
「…別に」
隣で食べている山崎に図星を突かれてパッと少し遠目にいる姉弟二人から視線を外した
「…なんかムカつくんだよなぁ…」
「?」
「こう…胸の中がなんとも言えない…ムカムカするというか…」
「よく分かりません…マヨネーズが祟ったんじゃないですかね」
笑いながら言う山崎を殴り飛ばして気絶させ、食堂を出た
マヨネーズへの侮辱は許さねェ
ふと前方を見ると総悟とミツバが先を歩いていた
またしても仲良くお喋り中だ
あ、またイラついてきた
どうやらガン見をしすぎていたせいか、総悟がくるっと振り返り俺を見ていた
そして勝ち誇った笑みを溢して向きを戻し、ミツバにくっついた
何しとんじゃアアァ!!!!
しかし相手はミツバの弟、今見ている光景は常日頃からあるもので違和感など皆無
ミツバも嫌がることなんてしないし、むしろ受け入れていた
そこを割り込んで総悟に殴りかかってみろ
俺が悪者になってしまう
怒りをグッと堪えながら二人の後ろで足を進めていると、二人とも部屋に入ってしまった
ミツバの部屋に総悟も入っていったのだ
いや、変な違和感とかはないよ?姉弟だし、普通じゃね?みたいな
けどなんだ、このイライラは
…もしかしなくても俺
嫉妬してる…?
いやいや、ナイナイ
彼女の弟に嫉妬とか、どんだけ独占欲の塊なの俺ェ!
うだうだと頭の中で自問自答を繰り返しながらミツバの部屋の前をぐるぐると回り始めた
そもそもなんで今ミツバの部屋の前をぐるぐる回ってるんだ!?
部屋に入りゃいいじゃねーか!用事なんて無いが、恋人だし!
けど、総悟がいるし、姉弟水入らずを邪魔していいのか!?
あああ…としゃがみこみ、本気で頭を抱えて悩み出していると、いきなりミツバの部屋の戸が開いた
「十四郎さん…?」
「…あ」
見上げると、ぱちくりと瞬きするミツバが立っていた
開いた戸から見えた総悟はミツバの部屋でくつろいでいた
「あの…十四郎さん?どうかしたんですか?」
「えっいや、別にッ!?」
あからさまに挙動不審になりながらスクッと立ち上がった
「…やっぱり何か…」
挙動不審になっている俺をミツバが心配そうに見つめていて
俺は「…あのさ、」とゆっくり口を開いた
「仲良すぎじゃねぇ?」
「はい?」
「…総悟と」
そう言うとミツバは「そうですか?」と首を傾げた
「なんか…ムカついた」
「え…あ…ごめんなさい」
「いや、お前が悪い訳じゃないけどさ…」
言い方が悪かった、としどろもどろに言葉を発した
「つまり、だな…」
「?」
「…嫉妬、したってこと」
嫉妬、と発言した辺りから顔に熱を帯び、ミツバから目線を落とした
ミツバはしばらくきょとんとするも、伝わったのか少し顔を赤らめる
そしてクスッと笑い声を出した
「…なんだよ」
「いえ、その…素直に嬉しいです」
嫉妬してもらえて、と赤い顔で話すミツバ
「…そんなもんか?」
「そんなもんです」
ミツバはそう言って少し悪戯な笑みをした
俺はといえば、イラついていた感情はいつのまにか消えていて
くそ、やっぱり可愛いな、なんて思いながらミツバの額を小突いた
嫉妬日和
土)牽制するつもりはねーが…あんまり仲良いのを見せるのは止めてくれ
ミツ)…考えておきます
(だって嫉妬してもらえるなんて嬉しいことこの上無いことだもの)
※仲良し沖田姉弟にちょっとだけ妬く土方
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