永遠の恋
あいつがいなくなって数日間
少しずつ傷は癒えてきていた
「トシ!久しぶりだなあ」
「とっつあん」
明るく手を振りながら屯所に現れたのは警察庁長官 松平片栗虎
刀を振っていたところに現れ、皆が手を止める
「トシ、そろそろ休憩にしないか?」
とっつあんもいることだし、と近藤さんに提案され、休憩にする
「にしても、どうしたんですかィ?」
総悟がとっつあんに用件を聞く
とっつあんは「えーとな…」とごそごそ何かを取り出した
そしてそれを俺に渡してきた
「え?」
「いやね、いつも近藤にばっかり世話焼いてたが、お前もいい歳だろ?」
もらったものを見ると、まあまあ綺麗な顔立ちをした写真の女が微笑んでいた
「どうだ?お見合い」
どくり、と心臓が鳴った
ふと思い出すのは栗色の髪をした彼女
「い、いや、トシにはお見合いは要らんよ…」
近くにいた近藤さんがとっつあんに言うが、とっつあんは「いやいや」と少し首を横に振る
「トシだってそろそろ女が欲しいだろ?こんな別嬪、他にいねーぞ?」
「んな事ねーよ」
何故だか今の発言には苛立ちのような感情を覚えてしまった
いるよ、こんな化粧で顔をごまかして作り笑いしてる女より
ずっと別嬪な女は
「俺ァお見合いする気は毛頭無ェよ」
「彼女でもいるのか?」
「ちょっ、とっつあん!!」
近藤さんが間に入るがとっつあんには無視される
「…いねーよ」
「なら、顔合わせでもしてみろ。気が変わるぞ」
「変わらない」
「じゃあ何だ、好きな女がいんのか…」
「…いたよ」
「過去形じゃねーの」
「とっつあん!もういいだろ、トシは見合い、したくねーっつてんだから」
近藤さんがまたも制止に入り、総悟はその光景をお決まりのポーカーフェイスで見ていた
まだ「俺はトシを思ってだな」と反論するとっつあんを近藤さんは促していた
「トシ、そろそろ稽古に戻れ。ほら、総悟も」
近藤さんに指示され、みんなをまた集めて稽古を再開した
「とっつあん…今のトシに恋愛事は持ち込まんでくれ」
「なんで」
「…つい先日、好きな女が亡くなったんだよ」
「…そうかい。でも過去は過去だろ」
「…そう簡単に忘れられるような恋じゃなかったってことだよ」
遠目で近藤さんたちが話し合っているのを眺めながら稽古をしていると刀で危うく斬られそうになるのを間一髪で避けた
「何ボーッとしてんでィ、集中しろ土方ァ」
「てめっ総悟オオォ!!」
こちらも斬りかかるがすばしっこくてひょいひょいと避けられる
ゼーハーと息をまいているとへらりとした沖田に見下ろされる
「…見合いなんざ気にしてんじゃねーよ」
「!」
「じゃ、俺ァ昼寝の時間なんで」
「あ、ちょっ、待て総悟!」
追いかけるにもまだ元気な総悟はすぐに消えてしまった
「…ったく…」
とは言え、総悟にあんな風に励ましを言われたのが少しだけ嬉しかったのか
まあ今日ぐらいは許してやろう、とまた一人稽古に戻るのだった
永遠の恋
彼女以外に別嬪な女なんざいない
と、とっつあんに宣言しようと意気込んだが、彼はもう帰っていた
※※※※※
とっつあん
ん?総悟じゃねーか
その見合い写真より、こっちの俺の姉上の方が別嬪じゃねーですかィ?
確かに…
もしかしてトシの女って…
※ミツバ篇後、とっつあんに見合いを持ちかけられる土方さん+沖+近
×