友達
今日はやけに寒い。
もう冬が始まるのか…。
そんなことを考えながら屋上に上がる俺は馬鹿だ。
ガチャと屋上のドアを開ける。ヒュオォと風が頬にあたる。
「やっぱり、いた」
視界に入るお団子頭の女子に声をかける。
「やっぱり、来た」
「…」
振り向いて返事をする彼女は泣き腫らした目をしていて、来なきゃよかった、と思った。
「あんなメール送られからな」
「…ごめんネ。」
「バーカ。話ぐらい聞いてやらぁ。弱気になったお前を見たかったのもあるしな」
本当はそんなことを思ってない。お前を慰めたくもないけれど。
「ばかさどやろーめ…」
「そりゃどーも」
人の気も知らないで悪口叩きやがって…
「はあー…なんでダロ。毎回告られて、付き合って、フられるなんて…そっちから告ってきたくせに」
「来るもの拒まずのオメーもどうだと思うがな」
そういうとギロリと睨まれる。
「確かにそうかも知れないけど、傷ついてる美少女に塩塗ってどうするアルか」
「美少女?誰が?」
「バカサディストめ」
「うるせー」
聞きたくねーんだよ、お前の恋バナなんざ。
なんで気づかないんだよ。
「ま、次がんばれば?なんなら俺にする?」
少しの慰めにサラリと思いを伝える。
初めてこんなこと言ったな…。
正直、心臓はパニック状態だ。
ポカンと見つめて沈黙が流れた。破ったのはチャイナ。
「慰めどーもネ。でもそこまで冗談言わなくていいアルよ。」
作ったような笑いを見せるチャイナ。
───ムカつく
なんで冗談にすんの?
マジに決まってんじゃん。気づかないの?
それとも遠回しにフられた?
そんな思考をしてしまえば怒りなんて消えて、臆病になる。
ここで冗談じゃないと否定してしまえばこたえは分かる。
「…慰めの仕方わかんねーから仕方ねーだろィ。ま、さっきのは普通に冗談だけどねィ…本気にした?」
俺はドSの癖にチキン野郎だ。結局、本心は聞けない。
だって、もし拒否られたら?
今までの関係が崩れる。
もう元には戻れない。
だから――言えない
「本気になんてしてないアル」
「だろうねィ」
ちょっと期待したんだけど、やっぱり期待はずれの答え。
「サド」
ふいに呼ばれてチャイナに目をやる。
「私達、ずっと友達アルよな?」
「ああ、そうだな」
友達
一番近くて一番遠い名前。
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