境界線突破
「沖田…?」
聞ける筈の無い懐かしいあの愛らしい声が後ろから聞こえ、胸をドキリと鳴らし、2年前に戻ったような錯覚を覚えた
だって彼女は父親の星海坊主と一緒に宇宙に行ってしまったのだから
「オイ、お前沖田ダロ…?」
声はだんだんと近づいてくる
幻聴?
でも気配もある
意を決して後ろを振り向くといたのは面影こそ似ているものの身長も、体型も大人に成長している女だった
「やっぱり沖田アル。無視すんなヨ!せっかく一番に会いに来てやったのに!!」
「お、う…悪い。」
プンプン怒るその性格はまさしく彼女そのものだ
呆然としていると次はブルースカイの瞳が俺をとらえて離さない
「…何?」
「変わったアルな」
「は?」
「前髪伸びてるし、顔も…童顔じゃなくなってる。マントも羽織ってるし…どっかの王子様みたいアルな」
そう言って彼女はキラキラした瞳で俺を見上げる
可愛いなチキショウ
「皇帝!そろそろ帝国にお戻りください」
自分の後ろの方からの隊士の声によって我に返る
「分かった。先に行ってろ」
「はっ!」
後ろの隊士に応え、彼女のほうに向き直す
彼女は「?」を頭に浮かべていた
「カ、イザー…?帝国??」
「…お前さ、えいりあんばすたーってのになれた訳?」
「う、うん。って言ってもパピーと宇宙回ってただけアルけど」
「へえ…すごいじゃん」
「おき、た…?」
クイ、と彼女の顎に手を添える
状況を分かっていないのか、呆然としている彼女に微笑を返す
「2年前、お前が宇宙に行く前…俺、言ったこと覚えてる?」
「…」
「お前に告ったろィ…?返事は保留にされちまったけど」
「───…それ、は」
「もともとどこかお前と不釣り合いなのは分かってた…
だから、次会ったときはお前の横に並べるような男になりたくて…俺は皇帝になった」
未練がましい?
迷惑?
例えもしお前がそう思っていても悪いが俺はそれをやめる気はないし、反省もしない
「…集まりあるから…行くわ。また会えたとき、告白の答え言えよ」
お互い黙り込んで埒があかなくなったのでその場を去ろうと足の向きを変える
言い逃げ?上等だよ
彼女に背を向けひらひらと右手を振る
「っ待て!!バカイザー!!」
あまりの声の大きさとバカとカイザーを足されたことに驚きながらゆっくり後ろを振り向く
彼女は顔を赤く染め上げ、瞳には少し透明な膜が張っていた
「言ったダロ!?お前に一番に会いに来てやったんだからナ!?銀ちゃんや新八、定春よりも前に!!…少しくらい察しろ馬鹿野郎!!」
え?
あ、そういえば言っていたような気もする
こいつ、自分の居た万事屋より前に俺に会いに来たってこと…?
何ソレ
嬉しいんだけど
「…つまり、期待していいのかィ?」
我ながら久しぶりに悪戯っぽい笑みを浮かべたんじゃないかと思う
「―…ッじゃあな、バカイザー!」
「あっテメ、それムカつくからやめろィ!」
ひらりと彼女は自分の前から消えた
次はいつ会えるのだろうか
昔みたいに、公園にいたら会えるだろうか
そんなことを考えながら俺もその場を去るのだった
境界線突破
次会ったときはどんな顔をしたら良い?
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